読書(あ~さ)

2023年11月25日 (土)

伊集院静著 ”いねむり先生” ☆

 

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内容紹介
色川武大との交流を描く著者自伝的小説の傑作
女優だった妻の死後、アルコール依存、ギャンブルに溺れ、
壊れてしまったボクは「いねむり先生」こと色川武大に出会う。
“大きな存在”との交流の中で、再生を果たす。



ギャンブル、アル中、分裂症、、、
いろいろな心の闇を抱えたひとの、魂の結びつきは、とても、柔らかで、

礼儀正しく、それでいて、タイトで、やさしく、温かい、、、
その加減が、とても居心地がよくて、
なんとなく読み始めて、次第に引き込まれていってしまう上質な本。


釣り宿の主人に色紙をねだられて、見ないで下さいと言いながら、
こっそりと書くくだりなど、なんかすっご~く、いいんですもん、、、

お二人の図抜けた観察眼に感服するとともに、
驚異的な記憶力には、脱帽するばかり、、、
こうでなくては、ギャンブラーは無理なんだろうな、、、とも、、、



エンディングには思わず絶句しました。
これは、計算したものなのか、、、だとしても、

まったく作為を感じさせない、意表をつく見事なお手並み。

それにしても、、、

阿佐田哲也(色川武大)って、そんなに素敵な人だったの、、、
”離婚” しか読んだことなかったけど、次々と読んで、
このチャーミングなおじさんに、また、会いたくなりました、、、



★★★★☆


文中の、絵描きのKさんと、歌手Iさんは、、、








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2023年11月 5日 (日)

上橋 菜穂子著 ”香君” ☆


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内容
遥か昔、神郷からもたらされたという奇跡の稲、オアレ稲。
ウマール人はこの稲をもちいて帝国を作り上げた。
この奇跡の稲をもたらし、香りで万象を知るという活神〈香君〉の庇護のもと、
帝国は発展を続けてきたが、あるとき、オアレ稲に虫害が発生してしまう。
時を同じくして、ひとりの少女が帝都にやってきた。
人並外れた嗅覚をもつ少女アイシャは、やがて、
オアレ稲に秘められた謎と向き合っていくことになる。

「飢えの雲、天を覆い、地は枯れ果て、人の口に入るものなし」――
かつて皇祖が口にしたというその言葉が現実のものとなり、次々と災いの連鎖が起きていくなかで、
アイシャは、仲間たちとともに、必死に飢餓を回避しようとするのだが……。

オアレ稲の呼び声、それに応えて飛来するもの。
異郷から風が吹くとき、アイシャたちの運命は大きく動きはじめる。




奇跡のオアレ麦が作り上げた、一大帝国は、
やがて、虫害によって崩壊の危機にさらされる。
環境因子で激変してゆく、作物、虫たち、、
その謎を秘めて壮大な物語が展開していく、、、

主食をたった一つに、しかもそれを、他国に頼り切ることの恐ろしさ、
これは、数少ない生産国の小麦に依存している、
今の世界の国々が抱えるリスクをまさに映し出しているのではと、、、


★★★★☆







 

2023年9月25日 (月)

井川意高著 ”熔ける” ★


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内容
大王製紙社長の長男として、幼少時代は1200坪の屋敷で過ごし、東大法学部に現役合格。
27歳で赤字子会社を立て直し、42歳で本社社長就任。順調な経営、華麗なる交遊……
すべてを手にしていたはずの男はなぜ〝カネの沼〟にハマり込んだのか?
創業家三代目転落の記。そして、刑期を終えたいま、何を思うのか――。


YouTubeの政経電論TVで、佐藤尊徳氏とのトークが面白くて、
俄然、井川氏に興味を覚えて、図書館に予約を入れました。
文庫も出ていたので、比較的すぐ手に取ることができました。

超リッチ&エリートの、破天荒な暮らしぶりを覗けて、楽しかった!、面白かった!

まるで瞬間湯沸かし器のように、すぐに切れて矢鱈と暴力的な父親が、
彼が重症急性アルコール中毒で友人たちに運ばれてきたとき、
小柄なその父親が彼を背負ってマンションの自室まで運び上げた話とか、
興味深いエピソードがてんこ盛り!、

ただ、ノンフィクション作家、佐野眞一氏によるデタラメな報道のくだりには、
この作家の舞台裏ってこんなものなのかと、がっかりしてしまいました、、、
ほんとうのところは分かりませんが、
夢中になって拝読した、この著者による、”あんぽん” 孫正義伝 は、どうだったのだろう、と、、、

宮沢りえとか、芸能人の小話は、
もともとあまり興味がないので、私的にはなくてもよかったなと、、、


以下に、私もこれはチョット気を付けようと思った一文を本文より転記します、、、

 

 

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2023年9月17日 (日)

青山文平著 ”鬼はもとより” ★


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内容
どの藩の経済も傾いてきた寛延三年、奥脇抄一郎は藩札掛となり藩札の仕組みに開眼。
しかし藩札の神様といわれた上司亡き後、飢饉が襲う。
上層部の実体金に合わない多額の藩札刷り増し要求を拒否し、藩札の原版を抱え脱藩する。
江戸で、表向きは万年青売りの浪人、実はフリーの藩札コンサルタントとなった。
教えを乞う各藩との仲介は三百石の旗本・深井藤兵衛。次第に藩経済そのものを、
藩札により立て直す方策を考え始めた矢先、最貧小藩からの依頼が。


朝日新聞の著者の寄稿文 を読んで、大いに感銘を受け手にしたこの一冊は、
まさに、低迷するこの国の経済復興と重なる筋書きで、
最初から最後まで、
奥脇抄一郎の男ぶりから、目が離せなくなり、一気読み、
そして、最後は、、、滂沱の涙、、、

★★★★★


以下に心に残った一文を本書より転記します、





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2023年8月11日 (金)

小川哲著 ”地図と拳” ★


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【 第168回直木賞受賞作】
【第13回山田風太郎賞受賞作】

「君は満洲という白紙の地図に、夢を書きこむ」
日本からの密偵に帯同し、通訳として満洲に渡った細川。
ロシアの鉄道網拡大のために派遣された神父クラスニコフ。
叔父にだまされ不毛の土地へと移住した孫悟空。
地図に描かれた存在しない島を探し、海を渡った須野……。
奉天の東にある〈李家鎮〉へと呼び寄せられた男たち。
「燃える土」をめぐり、殺戮の半世紀を生きる。


ひとつの都市が現われ、そして消えた。
日露戦争前夜から第2次大戦までの半世紀、満洲の名もない都市で繰り広げられる知略と殺戮。
日本SF界の新星が放つ、歴史×空想小説。



畳み込むように登場人物が次々と増えてゆく導入部に、
初老のおばさんは、これはダメかも、、、と、あきらめモードに入りかけたときには、、、
舞台は満州、壮大な歴史小説に、完全に引き込まれておりました、、、

混迷を極める、今、この時に、
細川や明男のようなリーダーがいてくれたならと、、、

巻末の長大な参考文献の数が、この物語のリアルな深淵を物語っているように思えて、、、
読み終えた本をしばらく、茫然と眺めておりました、、、

★★★★★ 



心に残った一文を、以下に本文より転記します、





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2023年7月22日 (土)

呉 勝浩著 ”爆弾” ☆


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このミステリーがすごい!2023年版 国内編第1位!
ミステリが読みたい!2023年版 国内編第1位!

内容
東京、炎上。正義は、守れるのか。
些細な傷害事件で、とぼけた見た目の中年男が野方署に連行された。
たかが酔っ払いと見くびる警察だが、男は取調べの最中「十時に秋葉原で爆発がある」と予言する。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。まさか、この男“本物”か。さらに男はあっけらかんと告げる。
「ここから三度、次は一時間後に爆発します」
警察は爆発を止めることができるのか。

爆弾魔の悪意に戦慄する、ノンストップ・ミステリー。



外気温34度、36度、、、
わたしひとりの、エアコンを入れた部屋で、、、、
とんでもない世界が展開し始める、、、
ひりつくような崖っぷちの心理戦から目が離せなくなる、、、


★★★★☆








2023年7月 6日 (木)

岩木一麻著 ”がん消滅の罠-完全寛解の罠”


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内容
日本がんセンター呼吸器内科の医師・夏目は、生命保険会社に勤務する森川から、
不正受給の可能性があると指摘を受けた。
夏目から余命半年の宣告を受けた肺腺がん患者が、
リビングニーズ特約で生前給付金三千万円を受け取った後も生存しており、
それどころか、
その後に病巣が綺麗に消え去っているというのだ。同様の保険支払いが四例立て続けに起きている。

不審に感じた夏目は、変わり者の友人で、同じくがんセンター勤務の羽島とともに、調査を始める。
一方、がんを患った有力者たちから支持を受けていたのは、
夏目の恩師・西條が理事長を務める湾岸医療センター病院だった。
がんの早期発見・治療を得意とし、もし再発した場合もがんを完全寛解に導くという病院。
がんが完全に消失完治するのか?
いったい、がん治療の世界で何が起こっているのだろうか――。
第15回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作。


素人の私にも分かりやすく組み立てられた医療ミステリー、
次第に引き込まれましたが、最後がいまひとつ、ちぐはぐな印象を否めませんでした。

ただ、西條先生が目指す理想の世界には、おおいに共感致しました、
それは、、、

 

 

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2023年5月18日 (木)

越谷オサム著 ”たんぽぽ球場の決戦” ☆


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内容
「ブンブン振って、ドタドタ走って、ポロポロ落として、
 でも最後まで本気で、勝ちに行きましょう! 」

かつて「超高校級」ともてはやされたピッチャーだった大瀧鉄舟は野球の道をあきらめ、
人生そのものが停滞したまま20代半ばを迎えてしまった。
そのまま生きていくのはツラすぎるけど、現実と向き合って人生をやり直す勇気もなかなか出ない。
そんな鉄舟が、ひょんなことから草野球チームを創設することに。
だが、彼の元に集まったのは結構クセ強な男女八人。すったもんだの果てに迎えた初の対外試合。
全員挫折経験ありのへっぽこナインが、河川敷のグラウンドで奇跡を起こす! (……かも)



まさにわかりやすい、王道展開ではあります、
あります、が、、、おもしろかった~!、

★★★★☆

インドア派のわたしは、スポーツをしないし、
TVのニュースで、スポーツダイジェストを見るのは好きですが、それくらいで、
野球もサッカーもマラソンも、スポーツ観戦を、まったくしません。
そんなわたしなのに、小説となると、なぜか夢中になってしまいます、

以下に、本文より心に残った一文を本文より転記します、、、

 

 

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2023年5月12日 (金)

青山 美智子著 ”月の立つ林で”


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内容
長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、
娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、
親から離れて早く自立したいと願う女子高生、
仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家――。

つまずいてばかりの日常の中、それぞれが耳にしたのは
タケトリ・オキナという男性のポッドキャスト『ツキない話』だった。

月に関する語りに心を寄せながら、彼ら自身も彼らの想いも満ち欠けを繰り返し、
新しくてかけがえのない毎日を紡いでいく――。

最後に仕掛けられた驚きの事実と
読後に気づく見えない繋がりが胸を打つ、心震える傑作小説。


著者の ”お探し物は図書室まで”  が、
あまりにも良かったので、ワクワクしながら手にしました。

多くの方々が絶賛なさっている、優しく心温まる一冊。
タケトリオキナの小話の数々に惹かれました、が、、、
期待が大きすぎたのか、私には、、、作り込み過ぎているように感じられました。

★★★☆☆


以下に心に残った”タケトリオキナ”の一文を本文より転記します、

 

 

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2023年5月 3日 (水)

諫山創著 ”進撃の巨人” 


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内容
巨人がすべてを支配する世界。巨人の餌と化した人類は、
巨大な壁を築き、壁外への自由と引き換えに侵略を防いでいた。
だが、名ばかりの平和は壁を越える大巨人の出現により崩れ、
絶望の闘いが始まってしまう。



こどもの頃からの重症活字中毒のわたしは、
三か所の図書館から予約を織り交ぜて、本を借りて、
常時3~6冊の本はストックしております、
、、、おります、が、、、

ある時、読む本がなくなってしまい、
ふらふらと長男の本棚を漁りに行って、、、

そして、、、




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大好きな本

  • あさの あつこ: バッテリー
  • サガン: なんでも
  • チャンドラー: 長いお別れ
  • ブレイディみかこ: ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
  • ユン・チアン: ワイルド・スワン
  • 三浦 しをん: まほろ駅前多田-
  • 中坊 公平: 金ではなく鉄として
  • 中脇初枝: 世界の果ての子供たち
  • 伊与原 新: 八月の銀の雪
  • 伊坂 幸太郎: 重力ピエロ
  • 住井 すゑ: 橋のない川
  • 冲方 丁: 天地明察
  • 原田 マハ: 太陽の棘
  • 司馬 遼太郎: 竜馬がゆく
  • 吉田 修一: 国宝
  • 和田 竜: のぼうの城
  • 夏川 草介: 神様のカルテ
  • 天童 荒太: 永遠の仔
  • 妹尾 河童: 少年H
  • 宮田 輝: 流転の海
  • 小川 洋子: 博士の愛した数式
  • 山崎 豊子: 沈まぬ太陽
  • 山崎 豊子: 大地の子
  • 山本 周五郎: なんでも
  • 山本文緒: 自転しながら公転する
  • 山田 詠美: アニマルロジック
  • 帚木 蓬生: インターセックス
  • 帚木 蓬生: 三たびの海峡
  • 恩田 陸: 蜜蜂と遠雷 
  • 新田 次郎: アラスカ物語
  • 東山 彰良: 流
  • 桐野 夏生: グロテスク
  • 沢木 耕太郎: 深夜特急
  • 浅田 次郎: 壬生義士伝
  • 浅田 次郎: 中原の虹
  • 畠中 惠: しゃばけ
  • 百田 尚樹: 永遠のゼロ
  • 百田 尚樹: 海賊とよばれた男
  • 石森 延男: コタンの口笛
  • 石田 衣良: 4TEEN
  • 篠田 節子: 長女たち
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