宮部みゆき著 ”理由” ★
内容 1998年初刊
事件はなぜ起こったか。殺されたのは「誰」で、いったい「誰」が殺人者であったのか――。
東京荒川区の超高層マンションで凄惨な殺人事件が起きた。室内には中年男女と老女の惨殺体。
そして、ベランダから転落した若い男。
ところが、四人の死者は、そこに住んでいるはずの家族ではなかった……。
ドキュメンタリー的手法で現代社会ならではの悲劇を浮き彫りにする。
第120回 直木賞受賞作
裁判所による不動産の競売の闇の恐ろしさを、切々と教えてくれる力作。
事件の裏で、それぞれの家族の心の在り様が映し出されていく様は、見事のひと言、、、
「火車」に続く、著者の代表作と感じいりました、、、
★★★★★
以下に心に残った一文を本文より転記します、
お義母さんみたいな嫁が__、
いえ、女がそういう風に苦しまなくちゃならなかった時代は、ほんのちょっと前のことなんですよ。
今は何もなかったように口をぬぐって、私たち日本人み―んなきれいな顔してますけどね。
あたしねぇ、あの目のくらむような高いマンションの窓をね、下からこう、見上げて、思ったですよ。
この中に住んでる人たちって、そりゃあお金持ちで、洒落てて、教養もあって、
昔の日本人の感覚からしたら、考えられないような生活をしてるんだろうなって。
だけど、それはもしかしたら、まやかしかもしれない。もちろん、現実にそういう映画のような人生の
日本人もいるんだろうし、それはそれでだんだん本当の本物になっていくんでしょう。だけど、
日本ていう国全体がそこまでたどり着くまでのあいだには、まだまだ長い間、薄皮一枚はいだ下に
昔の生活感が残っているって言うような、危なっかしいお芝居を続けていくんじゃないですかね。
核家族なんて言ってるけど、私のまわりの狭い世間の中には、本当の核家族なんか一軒だってありゃ
しません。みんな、歳取ってきた親を引き取って、同居したり、親の面倒をみに通ったり、
子供が結婚して孫ができりゃ、今度は自分たちが自分たちの親のように、早晩邪魔者扱いされるように
なることに怯えたりしてるんです。そりゃもう、いじましい話が山ほどありますよ。
あのウェストタワーを見上げている時、なんですかね、あたし急にムラムラ腹が立ってきてね。
なんか、あの内側に住み着く現実の卑しい人間のこととか何も考えないで、すうっと格好よく
立ってるでしょう。あんなとこに住んだら、人間ダメになる。
建物のかっこよさに調子を合わせようとして、人間がおかしくなっちゃうって、そう思いました。
« 飛蚊症が、ほぼ快方に、、、 | トップページ | アジの干物を食べたあとの、骨のスープ ☆ »
「読書(た~わ)」カテゴリの記事
- 凪良ゆう著 ”星を編む”(2024.08.31)
- 夕木春央著 ”方舟” ☆(2024.05.29)
コメント