帚木蓬生著 ”国銅” ★
歯を食いしばり一日を過ごす。星を数える間もなく眠りにつく。
都に献上する銅をつくるため、若き国人は懸命に働いた。
優しき相棒、黒虫。情熱的な僧、景信。忘れられぬ出会いがあった。
そしてあの日、青年は奈良へ旅立った。大仏の造営の命を受けて。
生きて帰れるかは神仏のみが知る。そんな時代だ。
何十年かぶりに奈良で大仏を拝した折、
いったいどうやってあの時代にこれほど巨大な大仏を、と、
興味を覚えて手にしたこの一冊に、完璧に打ちのめされました。
大仏の銅採掘から精錬、鋳造、、微に入り細を穿つその描写は、
専門分野の方々には、どれほど興味深いことでしょう、、、
新羅(しらぎ)出身の大工、多くの中国や韓国からの渡来人やその子孫、
彼らの知識と技無くしては、到底成し得なかった偉業であったこと、、、
全国各地から、とんでもない数の人々が集められ、危険な作業下で次々と落命し、
ようやくの帰郷の保証もないまま、まるで牛馬のような劣悪な条件下で働かされた、
貧しく名もなき人々の言葉を失う艱難辛苦、、、
★★★★★
以下に、心に残った一文を本文より転記します、
死者は、生者に力を与える。
生者が死者を思い出す限りにおいてはな。
菱と蓮の葉を裁って衣服とし
蓮の花を集めて飾りとしよう。
私を知る者、天下に無くとも良し
己の心の誠に芳しければ
お前たちひとりひとりがお前たちの主だ。
お前がお前の燈火だ。
自分の燈火で自分の足元を照らすがいい。
都では、血を吐くような課役と、絶え間ない飢えが待っているのかもしれない。
しかし反面、他の多くの連中が見ずに死んでいく都を、この目で眺め味わえる楽しみはある。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大好きな著者の、私のおすすめは、、、
・ナガイさんに教えてもらって心奪われた、”三たびの海峡”
・毎年千人以上も生まれ、男女の性以外の性が異常な性として隠蔽されている、
”インターセックス”
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