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2023年9月15日 (金)

朝日新聞 豊かでない日本を生きる智慧 1995年のニューヨークと2022年の東京 寄稿・青山文平


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・日本の食料自給率は、カロリーベースで38パーセント、

・エネルギー自給率はたった11.8%、

・普通国債残高は、累増の一途をたどり、2023年度末には1,068兆円に上ると見込まれています。
 また、財政の持続可能性を見る上では、税収を生み出す元となる国の経済規模(GDP)に対して、
 総額でどのぐらいの借金をしているかが重要です。
 日本の債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中で最も高い水準にあります。
 出典

・国民の所得に占める税金や社会保険料などの負担の割合を示す「国民負担率」について、
 財務省は今年度(2022年度)は47.5%となる見込みだと発表しました。
 過去最大だった昨年度をやや下回ったものの、国民所得の半分近くを占めています。
 出典


この国の在りように、暗澹たる思いですが、、、
昨年末のこの投稿に力づけられる思いです、それは、、、




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2022年12月21日 朝日新聞
寄稿・青山文平(小説家
)

私が初めてニューヨークの地に立ったのは1995年の冬でした。
いまとなっては信じがたいのですが、当時のアメリカ経済は最悪で、
一人当たりGDPは日本の65%。
1ドルはなんと80円を割る超円高。街は荒れ、私もティファニーの真ん前で、
悪名高いボトルマンに剃刀をちらつかされてゆすられました。
セントラルパークは、観光客が足を踏み入れる場所ではなかったし、
1丁目と8丁目は絶対に行ってはダメと言う意味で“いちかばちか”などと言われた。
折からの大寒波で、街は凍てついたようで、ダコタハウスの前に立った時は、
ジョン・レノンはなんでこんなところで逝かなければならなかったんだろうと感じたものでした。


それから、27年。日米の経済力は完全に逆転し、最新のレートで計れば一人当たりGDP
アメリカのわずか半分。為替は 一時は1ドル150円を超え、今も予断を許さない状況が続いています。

こうした数字だけを見れば、2022年のニューヨークになったっておかしくはありません。
でも、銀座和光の前で恐喝に会う事はまずないだろうし、日比谷公園でくつろぐことだってできる。
相変わらず、東京に足を踏み入れてはいけない街区などありません。円安による物価高とは言え、
まだ治安の悪化を招くほどには追い詰められていないからとも言えるのでしょうが、江戸時代の
中後期を舞台にした小説を書いている私は、そこに日本人の文化が現れているような気もしています。


中期よりあとの江戸は、地方から出てきた流動民が人口の多くを占める百万都市でした。
自給自足ならば、食うことだけはできたであろう百姓が、カネで暮らす世の中になって、
借財がかさみ、田畑を離れざるをえなくなっていったのです。
当然、江戸での暮らしも楽であろうはずがなく、
張り巡らされた運河に水死体を目にするのは珍しくなかったようです。
食うや食わずで、明日は大川に身を投げているかもしれない連中が、土間を入れても四畳の裏店に
身を寄せあって、今日はへらへらと笑っている。そんないつ弾けても不思議はない社会だったのです。

けれど、江戸二百六十余年の時の重なりの中で、実際に打ちこわしが起きたのは、
幕末の混乱期と享保や、天明の大飢饉の時くらいしかありません。
それも、極めて秩序だって行われて抑制が働いていたようです。
これは江戸だけのことではなく、中期以降は各地で百姓一揆が多発するのですが、
一揆勢が手にする得物は鍬や鉈などの農具で、刀剣の類は持とうとしなかった。
あくまで百姓としてやむなく立ち上がったことを、武器でも示そうとしたのです。

 

負荷がかかっても我慢が利いて、あるいは、するりと逃す術を身に付けていて、簡単には弾けない…
それは日本人の文化と言って良いだろうし、そしてその文化は、
これからますます大事にしなければならなくなる気がします。
2022年は、長い日本経済の停滞が、もはや停滞などではなく、常態であることを、
いやが上にも突きつけられた年でした。豊かな日本を取り戻すのは至難でしょう。
でも、私たちには、豊かではない日本を生きる智慧だってある事は、覚えておきたいと思います。

出典


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「妻をめとらば」という著者の御本を読んだことが有りましたが、
いたく心を動かされた私は、こちらの本を読んでみましたが、
これが、また、感涙もので、、、それが、この本です、、、








 

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