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2023年7月 6日 (木)

岩木一麻著 ”がん消滅の罠-完全寛解の罠”


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内容
日本がんセンター呼吸器内科の医師・夏目は、生命保険会社に勤務する森川から、
不正受給の可能性があると指摘を受けた。
夏目から余命半年の宣告を受けた肺腺がん患者が、
リビングニーズ特約で生前給付金三千万円を受け取った後も生存しており、
それどころか、
その後に病巣が綺麗に消え去っているというのだ。同様の保険支払いが四例立て続けに起きている。

不審に感じた夏目は、変わり者の友人で、同じくがんセンター勤務の羽島とともに、調査を始める。
一方、がんを患った有力者たちから支持を受けていたのは、
夏目の恩師・西條が理事長を務める湾岸医療センター病院だった。
がんの早期発見・治療を得意とし、もし再発した場合もがんを完全寛解に導くという病院。
がんが完全に消失完治するのか?
いったい、がん治療の世界で何が起こっているのだろうか――。
第15回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作。


素人の私にも分かりやすく組み立てられた医療ミステリー、
次第に引き込まれましたが、最後がいまひとつ、ちぐはぐな印象を否めませんでした。

ただ、西條先生が目指す理想の世界には、おおいに共感致しました、
それは、、、

 

 

 


苦悩や不安、死と滅びは日本文化に宿命として取り込まれていたのです。我々の国土は、
度重なる地震とそれに伴う津波、火山の噴火、洪水などの様々な災害に襲われてきました。
滅びは、私たちの国土に内包され、日本人はそれを一種の美意識とともに受け入れてきた。
その中で日本人独特の情緒が形成されていったのです。

 

新卒一括採用と終身雇用がこの国の経済活性化の妨げになっているというのが、
先生が組織した経済再生のための有識者会議の結論だった。
終身雇用は、経済が放っておいても、成長過程にあった戦後高度成長期には有効に機能していたが、
すでに我が国の経済はそういうフェーズにはない。

非正規雇用率は拡大の一途をたどっている。非正規雇用の若者たちが、
数が少なくなった終身雇用の椅子をちらつかされて、一生懸命努力しているが、
既得権益者たる終身雇用者たちが簡単に椅子を譲ってくれるわけがないのだ。

非正規労働者たちは目指すべき方向を誤っている。自分たちの雇用条件をよくするためには、
終身雇用の椅子を望むのではなく、終身雇用制度そのものの解消を目指して戦うべきだ。

大企業を中心に好景気時に一括採用された使えない人材が、
モチベーションを失って自らの椅子にしがみついている。
それが慢性疾患のように日本企業の生産性に障害を与えている。
彼らを単に無能で怠惰だと罵るのは容易い。
しかし新卒一括採用で雇用され、終身雇用のレールにしがみついていれば、
安泰と教え込まれてきた彼らを、一方的に批判するのは酷というものだろう。

大人としてはスタートラインである成人前後に、人生の方向性を決めなければならない日本人。
自らの特性を検討する十分な機会も与えられず、生き方に疑問を感じつつも、軌道修正の機会を
与えられることもなく、モチベーションを失ったまま仕事をしなければならないに不幸な人々。

一人当たりの生産性が世界でもトップレベルのデンマークでは、
雇用者は日本よりずっと簡単に労働者を解雇することができる。
ただ、デンマークでは、手厚い失業保険と、技能研修のサポートが存在している。
人々は自分の天職と言える職業を見つけるまで、再チャレンジし続けることが可能だ。

もちろん、デンマークは日本とは人口規模の異なる高福祉国家であり、税率も高い。
簡単に日本に輸入できるモデルではないが、
目指すべき方向性は、彼らの成功によって明確に示されていると先生は考えている。

佐伯の口調がにわかに熱を帯びた。「閉塞感を感じながらも、変化のための痛みとなると、
消費増税位しか受け入れられないのが今の日本人です。
ゼロリスクを好み、安定、安心が何よりも大切。解雇条件の緩和など絶対に受け入れられない」

先生は頷いた。
「与党がそんな法案を提出したら、野党はこぞって与党攻撃の材料にするでしょうね。だからこそ、
最大野党を懐柔しておく必要がありました。今日の会合が成功したのも、佐伯先生のおかげですよ」









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