凪良ゆう著 ”汝、星のごとく”★
☆2023年本屋大賞受賞作☆
ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。
風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、
自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。
ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。
生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。
ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。
メンタルを病んだ母親を捨てきれず、恋も夢もあきらめようとする、暁海。
ただひたすら、男の後を追い続けるだけの、櫂の母、、、
大きな夢を実現させた櫂、
だが、そこにあったものは、、、
すれ違ってゆく、それでも相手を思い続ける、それぞれの胸の内があまりにも辛すぎる、、、
ふたりの幸せを祈りつつ、ページを捲る手が、、、止まらない、、、
★★★★★
以下に心に残った一文を本文より転記します、
いつも男を優先させて子供なぞほったらかしだったくせに、『育ててあげた』は笑う。
その幸せで、気楽で、身勝手な遺伝子をおれも受け継ぎたかった。
やった方は忘れても、やられた方は一生忘れない。しかし、その嫌な経験や記憶が、
あぁ、違う、その記憶からの逃避こそが、俺に物語を書かせている。
幼い頃からずっと居心地悪く生きてきた。
俺の日常生活はクラスメイトの誰とも共有できなかった。
黴びた米やパン、腐って変色した野菜、それらの味など知りたくなかった。
けれど、それしかないから食べた結果、耐性ができていたのか、特に腹も壊さなかった。
そんな経験は、ただのゴミだから、ゴミで溢れかえった、日常を見たくなくて、物語にのめり込んだ。
けれど、ある時、ふと気づいたのだ。
他の連中が知らないことを、俺は知っているのだと。
それが宝石だろうが、汚物だろうが、ものを書く上では、同じ宝の山となることを。
捨てたくても捨てられないゴミのような経験を物語に生かして、尚人と出会い、漫画と言う形にして、
東京の大きな出版社の学歴の高い編集者が「才能」「繊細な感性」なんて褒めてくれる。
嬉しい一方、据わりの悪い椅子に腰掛けているような違和感が拭えない。
これは一体どんなどんな錬金術なのか。だからといって母親に礼など言わない。
それはそれ、これはこれだ。腐ったものの味などを知らない方が幸せだと俺は断言する。
・同じく著者の本屋大賞受賞作、”流浪の月”より、さらに、私には面白かった、、、
« ふたたびの奈良⑥ 奈良の鹿と買ったもの | トップページ | 韓国ドラマ ”私のIDはカンナム美人” ☆ »
「読書(た~わ)」カテゴリの記事
- 町田その子著 ”夜明けのはざま”(2024.09.14)
- 凪良ゆう著 ”星を編む”(2024.08.31)
- 和田秀樹著 ”感情的にならない本-不機嫌な人は幼稚に見える” ☆(2024.09.22)
- 夕木春央著 ”方舟” ☆(2024.05.29)
コメント