有川浩 ”空飛ぶ広報室” ★
内容 2012年発売
不慮の事故でP免になった戦闘機パイロット空井大祐29歳が転勤した先は、
防衛省航空自衛隊航空幕僚監部広報室。
待ち受けるのは、ミーハー室長の鷺坂(またの名を詐欺師鷺坂)をはじめ、
尻を掻く紅一点のべらんめえ美人・柚木や、鷺坂ファンクラブ1号で「風紀委員by柚木」の槙博己、
鷺坂ファンクラブ2号の気儘なオレ様・片山、ベテラン広報官で空井の指導役・比嘉など、
ひと癖もふた癖もある先輩たちだった……
10年以上前の本ですが、大きく心を動かされました。自衛隊が合憲かどうかは別にして、
大きな災害の時、悪条件の中、泥まみれ汗まみれになって活動しているのは、自衛隊の方々です。
★★★★★
以下に本書のあとがきより
心に残った一文を転記します、
「あの日の松島」を書くために松島基地を訪ねました。
防衛省の航空幕僚監部広報室にも再び訪れました。
取材の途中で「すみません」と謝りながら涙ぐむ人が何人もいました。
「悲しいわけじゃないんですけど、大丈夫なんですけど、なんでか急にこうなっちゃうんです」と。
悲しくないわけがなかったろうと思います。大丈夫だったわけがないだろうと思います。
彼らが未だにふとした拍子に涙するのは、一番大変な時に、一番大変なところへ、
私たちの代わりに駆けつけてくれるからです。
私たちの代わりに被災地に手を差し伸べてくれるからです。
一番悲しみの溢れる場所へ赴いて、彼らはその地の悲しみに立ち会うのです。
しかし彼らは決して当事者のような顔をしません。
立ち会っているだけだから悲しむ資格はないと自分の涙を詫びるのです。
一体なんという清廉な人たちに私たちは守られているのだろうと思います。
清廉な彼らはあの日の自分たちをドラマチックに脚色されることを望んではいません。
ですから、「あの日の松島」では、稲葉リカにそんな彼らをただ見てきてもらうことにしました。
皆さんに等身大の彼らが届くことを祈っています。
自衛隊をモデルに今までにいろんな物語を書いてきましたが、
今回ほど平時と有事の彼らの落差を思い知らされたことはありません。
ごく普通の楽しい人たちです。私たちと何ら変わりありません。
しかし、有事に対する資格があるという一点だけが違います。
その覚悟に私たちの日常が支えられていることを、ずっと覚えていたいと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
わたしは、いつも彼らの奮闘ぶりに頭が下がり、
感謝するばかりですが、、、
彼らを嫌悪する人々が少なからずいることもまた、事実です、、、
この本を読み終えて、しばらくしたとき、こんなニュースが流れてきました。
元自衛官の五ノ井里奈さん(23)が自衛隊の訓練中に性暴力を受けた問題で、
元自衛官3人が強制わいせつの罪で一転在宅起訴される運びとなりました。
東北の震災の被災者であった、五ノ井さんに、
やさしく親切にしてくれた女性自衛官のようになりたいと願い、かなえた夢でした、、、
事件の後、ここに至るまでに、彼女は様々な暴言、侮り、蔑みに、長い間苦しまれました、、、
けれども、弱い者に暴力をふるう自衛官もまた、心に弱さを抱えているのではないでしょうか、、、
それは、もしかしたら、
きつい任務を悪条件のもとで、一生懸命こなしているのに、
世間の理解を得られない、彼らの心の底に溜まった澱のようなものなのかもしれません、、、
五ノ井さんのような悲しい事件が二度と起きないように、わたしたち自身もまた、
このような本を読んだり、見聞を深めて、自衛隊の理解を深めたいと、願います、、、
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私も以前読みました~空飛ぶ広報室。(どんな感想書いてたっけ?と探したらまさかの読書メモ書き忘れてるようです。Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン。しかも阪急電車と空飛ぶ広報室2冊分・・・)冒頭はテレビ局にいる主人公の稲葉リカが偏狭でイヤな女に思えて仕方なくて、読み進めるのチョット嫌で挫折しそうになったのですが、娘に「かなり早いタイミングでちゃんと色々反省して変わって行くからもう少し見守って!」と言われて読み進めることが出来ました。とても良いお話でした。
人数をたくさん抱える団体には、やっぱりそれだけ色んな人が居るワケで、良い人ばかりとは限らないですよね。世の中には嫌なヤツ、卑怯な人もいるわけで。
ただ五ノ井さんをはじめとする弱者が餌食になって泣き寝入りせざるを得ないような場面がやっぱりやるせないです。
人が居る限り、どうしても起こってしまうものなのか・・・だとしたら私はやっぱり、それはあってはならないことなんだ、もしやっちまったら大変な代償を払うことになるよ・・・と厳罰化することもひとつの道なのではないかと思ってしまうのです。
投稿: ケリーちゃん | 2023年3月21日 (火) 21:56
★ケリーちゃん、
自分のブログをチェックしたら、有川さんの本を8冊読んでましたが、
この本と”阪急電車”が、ベスト2です♪
この頃では電車に乗っても、紙の本を手にしてらっしゃるお方を目にすることは、ほとんどなくなってしまい、
ケリーちゃんみたいな本好きのお方に、とっても親近感をおぼえてしまいます、(*^▽^*)
大きな団体にはいろいろな人いるわけですが、
おっしゃる通り、弱者が餌食になって泣き寝入りするケースは、数え切れないくらいにあると思います。
だからこそ、誹謗中傷を浴びながらも、毅然と戦いを挑む、五ノ井さんのようなお方を、
陰ながら、微力ながら応援したいと思います!、(^_-)-☆
投稿: きぬえ | 2023年3月22日 (水) 10:36