湯川久子著 ”ほどよく距離を置きなさい” ☆
内容
九州第1号の女性弁護士として福岡市に開業してから、おもに離婚や相続といった
人間関係の交通整理を専門に人間関係のもつれをほどいてきた湯川氏。
1万件を超える相談案件を通して、
「どんな人でも、外からはうかがい知ることのできない、悩みや迷いを抱えている」こと。
そして「ほどよく距離を置くことこそ、人が心地よく生きていくために必要な心がけ」と実感するに
至ったそうです。人の心は法で裁くことはできず、法廷で裁かれる「勝ち」あるいは「負け」が、
人生の本当の幸せを決めることはない。60年以上にわたってそれを実感しながら、
法で裁くことのできない人間模様を目の当たりにしてきた著者が、
「それでは、本当の幸せとはなんだろうか」と思いを馳せ続けた結論が、この本につづられています。
発売日 : 2017/11/17
以下に心に残った一文を本文より転記します、
「話す」ことは「離す」ことです。
日本語には数多くの同音異義語がありますが、それらは密接に繋がっているように思います。
心の中に溜め込んだ苦悩や怒りを言葉にして誰かに話すことは、心の治療のような効果があります。
ただそれだけで苦しみから解放されていくようです。
詩人の吉野弘さんの『祝婚歌』より
「正しいことを言うときは
少し控えめにする方がいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと気付いている方がいい」
投げつけられた言葉の刃は、相手を有無を言わせずに痛めつける凶器に他ならないからです。
その裏には「わかってほしい」「自分を大切にしてほしい」という思いが隠れていることも
あるでしょう。しかし《言刃》は、からまった二本の糸をぶった切ってしまう「刃」です。
切られてしまった糸は、結び直さない限り、元には戻りません。
「剣をとる者はみな、剣で滅びる」(マタイによる福音書)
誰かを試そうと、あるいは、操ろうと投げつける言葉の剣は、
相手も自分をも傷つける、諸刃の剣であることを忘れてはなりません。
何かできないことが一つ増えると、一つ、誰かの手を借りることになります。
「これは自分で立派にできたことだ」といった、
今までのプライドを握りしめたままでは生きられなくなって行きます。
できなくなったことにこだわらず。出来ることをやる。その中で楽しく生きていく
――そんな方向転換が無意識のうちに始まります。
中国北宋代の儒学者、司馬温公はこう言っています。
「大金や資産をいくら多く残しても、
子や孫たちはこれを上手に守り使うことはできないものである。
子孫をいつまでも栄えさせようと思えば、
世の人々のために自らが陰徳を積むことこそが、
子孫が幸せに暮らす基となる」
子の行く末を案じて財産を遺そうとしても、
突然降ってきたお金は人をなかなか幸せにしないということ。
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