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2022年4月 9日 (土)

逢坂 冬馬著 ”同志少女よ、敵を撃て” ★


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2022年本屋大賞受賞! 

内容
発売前からSNSで話題!
史上初、選考委員全員が5点満点をつけた、第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作

・アクションの緊度、迫力、構成のうまさは只事ではない。
 とても新人の作品とは思えない完成度に感服。──北上次郎
・文句なしの5点満点、アガサ・クリスティー賞の名にふさわしい傑作。──法月綸太郎

独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として
奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。
自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。
「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、
イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。
母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。
同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、
やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。
おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは
?



ドイツがソ連を侵略していく、、、
強大な軍事力を誇るドイツ軍を相手に、大地を地に染めながら、国土を守るソ連のひとびと、、、
四年に満たないこの戦いで失われた命は、ドイツ人900万人、ソ連は2,000万人以上、、、

ロシアがウクライナに攻め入って、緊張感が増していく今、、、
争いを繰り返す人間の哀しいばかりの愚かさ、、

★★★★★ 


以下に心に残った一文を本文より転記します、





 

「撃て!」
ドイツ語で叫びが聞こえて、直後に幾重にも銃声が響いた。

村に整列させられていた人々もまた、音とともに死体と化した。
ボルコフ夫妻もゲンナジーさんも頭から地面めがけて飛び込むように倒れ、
苦しみながら倒れた村人には更なる銃弾が浴びせられ、念を押すように銃剣が刺突される。
村人たちの体から血が溢れ、村に積もっていた雪が赤く染まっていく。
ドイツ兵は村人を滅多刺しにした。
笑い声がした。今何十人もの人を殺めた者たちの笑い声には屈託がなかった。



水車小屋といくつもの家が全て戸を壊され、家畜がトラックに乗せられている。
雪上に倒れた30数名の死体からおびただしい血が流れ、その血からもうもうと湯気が上がっていた。
時折呻く声がすると、ドイツ兵は念入りに銃弾を撃ち込んだ。
セラフィナは、一軒の家へ連れて行かれた。そうと知っているわけではなかろうが、

それは彼女の自宅だった。母とふたりで暮らしていた家に、ドイツ兵たちは我が物顔で上がり込み、
略奪した食料を食べ、秘蔵の酒を呷っていた。
そこへ引きずられてきた母の死体が、銃とまとめて無造作に投げ出された。
 ・・・ 

兵士の一人が、ほら、と視線をやった。視線の先に、先ほどはいなかった二人、
アントーノツおじさんの奥さんナターリアさんと、14歳のエレーナが、死体となって転がっていた。
二人とも衣服の全てを剥ぎ取られていた。頭と、それから足の間から、激しい出血の痕があった。
髭の男が言った。

「女への暴行は軍記に反するし、劣等人間たるスラヴとの性交は犯罪だ」
セラフィマの頭をつかんでいる男が声を上げて笑った。
「そりゃ占領地で性病にならねえための決まりだろ。誰もこいつに妊娠して俺の子を産めなんて
言ってねぇし、お偉方にこいつが泣きつくなんてことも考えていねぇよ、
とっとと終わらせて、撃って終わりだ、いつもそうだろ」


ウクライナから来たオリガは、
「私はモスクワのロシア人と違うもの、、、それについての考え方が。
ウクライナが、ソビエト・ロシアにどんな扱いをされてきたか、知ってる?、
何度も飢饉に襲われたけれど、食料を奪われ続け何百万人も死んだ。たった20年前の話よ。
その結果ウクライナ民族主義が台頭すれば、今度はウクライナ語をロシア語に編入しようとする。
ソ連にとってのウクライナってなに? 略奪すべき農地よ」



ロシア、ウクライナの友情は永久に続くのだろうか、とセラフィマは思った。
しかし自由化の風潮のもと、多くの民族自治領土が回復しても、

コサックが名誉回復を宣言されることはなかった。
アヤの故郷カザフもまた、ロケット基地の建設や重工業への邁進、原爆実験場の設置を
恩恵と考えれば先進的な都市化が進んだと言えようが、そこに遊牧民の居場所はなかった。
そしてまた、ソ連が自由化の時代にあろうと、停滞の時代を迎えようと、それぞれにおいて
異論を許さない国家体制は健在であり、ハンガリーやチェコなどの周辺国で発生した
自発的な民主化の試みは、その都度ソ連国軍の派遣によって蹉跌を見た。

ソ連という名の国家は、軋みながら進む砕氷船のようだった。
大小の氷を打ち砕いて進む船体が矛盾によって傷み、いつしか沈むのではないかという不安を

皆が共有していたが、船が沈めば、ボートへ別れ極寒の海へ漕ぎ出すしかない。
航海中に船長が変わるように権力は変遷し、価値観を移ろう。

その中で大祖国戦争こそは普遍的な「国民の物語」であった。
おびただしい人命を失いながら、防衛戦争として強大なドイツ軍を迎え撃ち、

ついには人類の敵、ナチ・ドイツを粉砕したという事実は、ほとんど唯一と言っていいほどに
ソ連国民が共有することのできる、輝かしく心地よい物語として強化されていった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



  この冒頭の村人の惨殺とレイプシーンに既視感を覚えました。
     それは、宮本輝著「流転の海」で、日本軍が中国の小さな農村に襲い掛かったときのシーンと、
  まったくといい程、酷似していたのです、、、
  戦争って、こういうものなんだと、、、愕然としました、、、




                   ®2022年3月8日にアップしたリユース記事です




 

 

 

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