宮田輝著 ”流転の海 第三部 血脈の火” ★
内容
昭和27年、大阪へ戻った松坂熊吾一家は、雀荘や中華料理店を始めとして、次々と事業を興していく。
しかし義母の失踪に妻房江の心労はつのり、洞爺丸台風の一撃で大損害を被った熊吾も糖尿病の宣告を
受ける。そしてたくましく育つ無邪気な小学生伸仁にも、時代の荒波は襲いかかるのだった……。
復興期の世情に翻弄される人々の涙と歓びがほとばしる、壮大な人間ドラマ第三部。
本の虫のわたしが選ぶ、ベストファイブのうちのひとつ、、、
こんな先生に診てもらたい、素晴らしい養生法、
そして、まさに、今この時代、この時を言い当てているかのような、
心に残った一文を本文を以下に転記します、
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「健康保険のおかげで、医療費は安くなって、これまで金がなくて医者にかかれんかった人達が
病院で診てもらえて、誠に結構なことだと思いますがなァし」
「健康保険は、医者に、使う必要のない薬を出させ、切らなくてもいい体にメスを入れさせるんです。
保険制度は、実に素晴らしい。しかし制度の中身は、
すべての病気は薬や手術で治るという考え方で片付けようとする役人仕事です。
例えば、今夜、この病院では、糖尿病患者の松阪熊吾さんに食餌療法を学んでもらうために、
てっちりを用意した。しかし、このてっちり代は、保険では払ってもらえんのです。
しかし、松坂さんが糖尿病を持ちながらも、仕事をし、天寿を全うするためには松坂さんだけの
てっちりの食べ方を知ってもらわなくてはならん。しかし、役人はそれを認めない。
私が何かの薬を処方して投薬しなければ、私の医院は経済的に成り立たんというわけです。
薬なんか使わなくても、治る病気は山ほどあります。ただちょっとした医者の助言を必要とする。
保険は、この助言には金を払ってくれません。そこで医者は、使う必要のない薬を出す。
使う必要がない薬は、全て毒ですよ。だから、私の医院では保険を適用しません。
開業して一週間もたたないうちに、庶民を相手にしない悪徳医者だと評判になりました。
悪徳医師と呼ばれて結構。私は病む人をなおすために医学を学び、医者になったんですからな」
腹が減ってたまらない時は、
干し椎茸とわかめを戻して、それに酢と醤油をかけて食べるのがいいですよ。
腹は膨れるし、血液は綺麗になる。酢の物は、二杯酢でね。三杯酢はいけません。
まったく一病息災です。これからずっと、私の言う通りの食生活をすれば、
糖尿病と共存していけるだけでなく、肝臓にもいいし、コレステロールもたまらない。
血管も若さを保ち、心臓に脂もつかない。
本来なら75歳までの寿命が85歳まで伸びるかもしれません。
病気というのは到底そういうものです。
つまり、そういうふうに考えて、自己を律していけばいいんです。
そうやって、いつかこの地球という星にも滅びる日が訪れる。
そんなことは天文学の初歩的常識なのに、人間は戦争する。
そしてその犠牲となるのは、戦争を計画し実行したものではないのだ 、、、
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