« お手軽お汁粉 | トップページ | ミスドで、老後資産のことを考える、、、 »

2022年1月10日 (月)

山本文緒著 ”自転しながら公転する” ★


71whyw2zhn


内容(「BOOK」データベースより)

32歳の与野都は、2年前まで東京でアパレルの正社員として働いていたが、
更年期障害を抱える母親の看病のため、茨城県の実家に戻ってきた。
今は牛久大仏を望むアウトレットモールのショップで店員として契約で働いている。
地元の友だちは次々結婚したり彼氏ができたりする中で、
都もモール内の回転寿司店で働く貫一と出会いつき合い始めた。
でも料理が上手で優しいけれど経済的に不安定な彼と結婚したいかどうか、
都は自分の気持ちがわからない。実家では両親共に体調を崩し、気づいたら経済状態が悪化していた。
さらに職場ではセクハラ、パワハラいろいろ起きて――。
恋愛をして、家族の世話もしつつ、仕事も全開でがんばるなんて、そんな器用なことできそうもない。
ぐるぐる悩む都に貫一の放った言葉は、「そうか、自転しながら公転してるんだな」。

 2021年本屋大賞第五位 



昨年、58歳で逝去した山本文緒さんの7年ぶりの小説。

恋に、仕事に、親のこと、、、優柔不断で依存心のカタマリのような都の、
不安と欲の間を絶えず揺れ動く、巧みな心理描写に引き込まれ、夢中になって読みました、、、

著者のご冥福を祈りつつ、、、
次は「恋愛中毒」を読んで、稀有な才能の持ち主のあなた様に会いに行きます、

★★★★★



海辺で「蘊蓄(うんちく)うざい」って、彼氏にケリを入れて大喧嘩するところが、一番面白かった!
エピローグはなかったほうが良かったように思うけれども、
それは、これを書きたかったからなのかも、、、ということも含めて、
以下に強く心に残った一文をいくつか転記します、









「お前の人生に家族は必要ないって言うなら、この先死ぬまで一人で生きて行け。もしこの家を出て
 結婚して新しい家庭を作ったとしても、やっぱりお前は何かあったら逃げるんだろう」 


ローンはまだまだある。
夫が定年まで勤めたとしても完済しない。退職金を注ぎ込めばなんとかなるが、
できればそれは老後の資金としてなるべく手をつけずに置きたかった。
働くことへの恐怖。そしてお金が十分ではない恐怖。
回復の見通しが立たない体調不良。相乗効果で不安は膨らむばかりだった。



都は周りの人に細かく気を配って、思いやりをもって生きているつもりだった。
しかしいざ家族が病気になると、自分の時間を差し出して面倒を見ることが本当は嫌で仕方なかった。
肉親に対してでもそうなのだから、赤の他人に無償で何かすることだと考えたこともない。
貫一と比べると自分を薄情だ。虫歯に水が染みるように、気持ちの奥がきしんだ。

 


前にそよから、 お洒落な人は狭量だと言われたことを思い出した。お洒落とは人との差異だから、
それはそうだと思った。そういえば前の恋人はものすごいグルメで、だから狭量だった。
入った店で味の良くない料理を出されると別人のように口汚く罵った。



何かに拘れば拘るほど、人は心が狭くなっていく。

幸せに拘れば拘るほど、 人は寛容さを失くしていく。



この人がいなくなっても生きていける!、と天啓を受けたようにはっきり思った。
それどころか、この先、気の合う人に巡り合わなかったら別に一人でいい、気の合わない人と
不安を解消するためだけに一緒になる必要なんか全然ないと初めて感じた。
今まで自分は何がそんなに怖かったのだろうと不思議な気分にすらなった。 



両親は生存戦略を練り直したんだな。長く一緒にいれば行き詰まる時もある。
でも変化していけば何とか突破口は見つかるものなのかもしれない。

 

 

でもそれよりも、 静かに枯れて色を失くしていくようなこの国にいるより、
天に向かう竜巻のような国へ飛び込みたい、という気持ちが一番大きいかもしれなかった。
2年前の2040年、ベトナムの人口はとうとう日本を上回った。私が4歳の時は日本の3人に1人が
65歳以上の超高齢化社会となった。その後、地滑りを起こしたように地方自治体の多くが破綻し、
老人ホームも病院も足りなくなって、世界的に見ても福祉の悪化が問題となった。
ニュースは過疎化、地方の荒廃、人手不足というワードを繰り返した。
私の世代は学校を出たら海外で働くつもりの人がクラスの半分以上だった。
中国やインドで働くことが生きていく手段として妥当だと考える人は多い。
私もベトナム料理に出会うまでは、なんとなくどちらかの国に働きに行こうと思っていた。
日本にはエリート以外はろくな職がなかった。賃金は安く社会保険料は高く、
それこそ子供など夢のまた夢のような生活しか送れない。



「別にそんなに幸せになろうとしなくていいのよ、幸せにならなきゃって思い詰めると、
 ちょっとの不幸が許せなくなる。 少しくらい不幸でいい。思い通りにはならないものよ」

 









 

 

« お手軽お汁粉 | トップページ | ミスドで、老後資産のことを考える、、、 »

読書(た~わ)」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« お手軽お汁粉 | トップページ | ミスドで、老後資産のことを考える、、、 »

大好きな本

  • あさの あつこ: バッテリー
  • サガン: なんでも
  • チャンドラー: 長いお別れ
  • ブレイディみかこ: ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
  • ユン・チアン: ワイルド・スワン
  • 三浦 しをん: まほろ駅前多田-
  • 中坊 公平: 金ではなく鉄として
  • 中脇初枝: 世界の果ての子供たち
  • 伊与原 新: 八月の銀の雪
  • 伊坂 幸太郎: 重力ピエロ
  • 住井 すゑ: 橋のない川
  • 冲方 丁: 天地明察
  • 原田 マハ: 太陽の棘
  • 司馬 遼太郎: 竜馬がゆく
  • 吉田 修一: 国宝
  • 和田 竜: のぼうの城
  • 夏川 草介: 神様のカルテ
  • 天童 荒太: 永遠の仔
  • 妹尾 河童: 少年H
  • 宮田 輝: 流転の海
  • 小川 洋子: 博士の愛した数式
  • 山崎 豊子: 沈まぬ太陽
  • 山崎 豊子: 大地の子
  • 山本 周五郎: なんでも
  • 山本文緒: 自転しながら公転する
  • 山田 詠美: アニマルロジック
  • 帚木 蓬生: インターセックス
  • 帚木 蓬生: 三たびの海峡
  • 恩田 陸: 蜜蜂と遠雷 
  • 新田 次郎: アラスカ物語
  • 東山 彰良: 流
  • 桐野 夏生: グロテスク
  • 沢木 耕太郎: 深夜特急
  • 浅田 次郎: 壬生義士伝
  • 浅田 次郎: 中原の虹
  • 畠中 惠: しゃばけ
  • 百田 尚樹: 永遠のゼロ
  • 百田 尚樹: 海賊とよばれた男
  • 石森 延男: コタンの口笛
  • 石田 衣良: 4TEEN
  • 篠田 節子: 長女たち
  • 金城 一紀: GO
  • B・パーカー: スペンサー
無料ブログはココログ