宮本輝著 ”灯台からの響き”
内容
本の間から見つかった、亡き妻宛ての古いハガキ。
妻の知られざる過去を追い、男は灯台を巡る旅に出る――。
地方紙で連載されていた人気作、待望の書籍化!
著者の「流転の海」の虜となったおばさんは、このシリーズを大事にとっておいて、
淡々と進むミステリー仕立ての本作を手に取ったのでありました。
心に残った一文を、以下に転記します、
激烈なラーメン戦争に生き残ったその理由は、、、
「まったく何一つ変えなかったよ。確かに一時は客が減ったけどな、1日12、3杯しか
出なかった日もあった。でも、お前のおじいちゃんが、人は過剰なものにはすぐに飽きるって。
『牧野』はどこにも負けないから安心しろって言ったんだ」
父の言った通りだった。ラーメン戦争はいつのまにか収束した。しかしブームが去るにはやはり
10年近くかかっている。一気に「まきの」に昔どおりの客足が戻ってきたわけではない。
その頃の経験で、康平は世の中は10年単位で大波小波がやってきて、
淘汰されるものは消えていき、耐えた者たちが、人も物もさらに基盤を強くすると学んだ。
両手を出していたから、この程度で済んだ。
ポケットに突っ込んでいたら、顔を打ち付けて歯は折れ、顎の骨は砕けていただろう。
「威風堂々と生きたいな。
焦ったって、怖がったって、逃げたって、悩みが解決するわけじゃないんだからな。
こつこつと、ひとつひとつ、焦らず、怯えず難問を解決していく。
俺はそういう人間になるために、今から努力するよ」
無駄な邪推や余計な心配が俺の人生を小さくさせている。
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