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2021年2月20日 (土)

篠田節子著 ”鏡の背面”


Kagami


  内容
  薬物や性暴力によって心的外傷を負った女性たちのシェルター「新アグネス寮」で発生した火災。
  「先生」こと小野尚子は取り残された薬物中毒の女性と赤ん坊を助けるために死亡。
  スタッフがあまりにふさわしい最期を悼むなか、警察から衝撃の事実が告げられる。


豊かな日本で、地獄の底を這いまわっているようなひとがいる、
その一方で、スラムのこどもたち、、、
またしても、篠田節子さんの世界に完全に引き込まれました、、、
・・・ただ、その分、エンディングが、、、


 心に残る一文を以下に転記します、、、





 

 

マニラの子供達はスラム裏手のゴミ捨て場で、空き缶や瓶、まだ使えるものを拾って、
生きるのに必要な金を得ている。そうしたところに入り込む子供達の怪我は日常茶飯時だ。
数キロ離れた所まで悪臭が漂ってくるようなごみの山の汚染は凄まじく、ちょっとした擦り傷、
切り傷が膿んで手足を切断することになったり、破傷風などに感染して命を落とすことも多い。
スラブの診療所に医師はおらず、看護婦さえ不在にしていることが多かった。
それでも死に瀕するまで病院に行かないスラムの住人にとって、
重症になる前に傷口を清潔な水で洗い、清潔な布で保護してくれる診療所の存在意義は大きい。
怪我や病気はきれいな水さえあれば、多分8割は治るかもしれない。それとサンダルや運動靴。
清潔な衣服があればもっといい・・・ワクチンとか薬とか粉ミルクはその後でいいのよ。


私自身が本当にお酒と縁が切れたのも、スラムの子供達のおかげですし、私も含めて、
お酒とか薬とか悪い男の人に溺れるのは、その向こうの死に誘惑されているということなの。
そんなとき人は死ぬことと仲良しになりたがっている。


日本は豊かなのにそういう人がたくさんいるけれど、泥や煙で真っ黒に汚れていても、
目はキラキラ輝いていて、汚水の流れる路地をはね回っている。彼らの周りには光が溢れているの。
あの子たちの心の底に生命の水が宿っているみたい。どんなことにも喜びを見つけ、
その喜びを活力にして生きてゆく。それはなぜなのかしら。私たちが忘れたものを持っているから。
私は洗礼を受けたこともないし、何か特定の信仰もないのだけれど、神様が与えてくださった
喜びの泉はみんなが胸の奥に持っている。そんなことをあの子達を教えてくれる。


平和な日本で、最底辺の人生を歩まざるを得ない女たちがいる。健全な人々から、
ときに自己責任、自業自得という冷たい視線を浴びせかけられる女たち。

その彼女たちの想像を絶する悲惨な過去に向き合い、現在に寄り添い、
小さな希望の火をともし続けた、一人の日本人がいた。


憎しみを抱いていても、利害関係が鋭く対立していても、好感を表し表面的な友好関係を
維持しなければ、食っていくこともままならない過酷な大人の世界に放り込まれる前に、
苗床のような環境で、同年代の女同士、ぶつかり合い、励まし合い、傷つけ合い、生身で触れ合い、
自分の感情や関係性を処理するための一通りのトレーニングを積むことができた。
幼い頃から大人の役割を要求され、あるいは虐待を受け、そんな当たり前の時間を
手にできなかった人々がいる。そのことを改めて思い知らされ、重たい気分になる。









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読書(あ~さ)」カテゴリの記事

コメント

篠田節子のまだ読んでない作品!と嬉しくなったのですが、Kindleではまだ読めないようでがっかり。
とはいえ、Amazonの評価には、この小説には少し無理な設定があるという意見があります。
多くの方が、筆力でぐいぐい読ませていくのはいつもの通りだけど、最後はちょっと拍子抜けと思われたようで。
でもやっぱり読んでみたいです。
こういう作品とは裏腹に、エッセイや対談を読むと彼女はめちゃくちゃ明るいお人柄のようですね〜。

はちこさん、
暴力、貧困、薬、売春、底辺の世界に身を置く人々の闇を、まさに卓越した筆力が照らし出し、そこに潜むミステリアスな謎が、読む者をぐいぐいと引き込んでいくのです、が、おっしゃる通り、作り込みすぎて、エンディングに無理があるかと、、、
”介護の後ろからガンが来た”は、読まれましたか?、著者の日常がうかがい知れて、興味深かったのですが、乳がんの闘病記が微に入り細に穿っていて、なんだか滅入ってしまい、途中で本を置きました。乳がんになったら、ぜひ、読もうと思います、、、

はい、介護の後ろから・・・は読みました。
乳がんを患ってもすごく力がみなぎっている人柄が、頼もしいなあと思いました。
お母さまがかなりの強者で、その相手をするのは大変だったろうに、精神力の強い方ですよね。

鏡の背面、やはりそうでしたか〜。
エンディングにかなり無理がありそうですね。
つじつま合わせはちょっとがっかりしそうだし、読むかどうかの決断はしばらく保留します。
最近は西岸良平さんの三丁目の夕日という漫画をKindleで買って読んでます。
昭和30年代の世界に、なんだかほんわかと心が温まる感じ^^

★はちこさん、
篠田節子さんって、本当に多才でパワフルで尊敬します!
この本のエンディングは、たしかに期待外れの感はありますが、
それを補って余りあるほどの奥深さはあります、、、
いつか、ご縁がありましたら、、、

三丁目の夕日、面白そうですね!、
図書館にあるかしら、、、探してみます、(^▽^)/

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