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2020年2月 3日 (月)

ブレイディみかこ著 ”ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー” ★


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本屋大賞2019 ノンフィクション本大賞受賞!、
紀伊國屋書店が選ぶ「2019年のベスト本」第1位、

 『大人の凝り固まった常識を、子どもたちは軽く飛び越えていく。
  世界の縮図のような「元・底辺中学校」での日常を描く、落涙必至の等身大ノンフィクション。

  優等生の「ぼく」が通い始めたのは、
  人種も貧富もごちゃまぜのイカした「元・底辺中学校」だった。
  ただでさえ思春期ってやつなのに、毎日が事件の連続だ。
  人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。
  時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。
  世界の縮図のような日常を、
  思春期真っ只中の息子とパンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。
  連載中から熱狂的な感想が飛び交った、私的で普遍的な「親子の成長物語」。』


英国在住の著者の朝日新聞のコラムを時折拝読するたび、感じ入っておりましたが、
あらためて、底辺中学校に通う子供たちの凄まじいまでの貧しさに絶句、、、
そして、また、「みんなちがって、みんないい」を地で行く、図抜けた多様性にも、絶句、、、
この本は市民図書で借りましたが、、、購入決定、
素晴らしい一冊、

★★★★★ 


以下に、心に残った一文を転記します、



 

 


わたしが勤めていた託児所には失業率と貧困率が非常に高い地域の慈善施設の中にあり、
DV、依存症などの問題を抱えた家庭の子供が多く通っていた。
彼らは表情に乏しかったり、うまく感情を伝えられないことが多かった。
他人に自分の感情を伝えられない子どもは、他人の感情を読みとることもできない。
他者がつらそうな顔をしていたり、嫌がって泣き始めても、
それが彼らに痛みを与えている自分に対する「ストップ」のサインなのだと分からない。
問題行動が見られる子供はこうしたコミュニケーション面での発育が不十分な場合が多い。
だからこそ、わたしが「底辺託児所」と呼んでいた
演劇的な要素を取り入れたゲームや遊びに力を入れていた。


「自分が正しいと集団で思い込むと、人間はクレイジーになるからね」


分断とは、どれか一つを他者の身にまとわせ、自分の方が上にいるのだと思える
アイディンティティを選んで身にまとうときに起るものなのかもしれない、と思った。


EU離脱派と残留派、移民と英国人、様々なレイヤーの移民どうし、
階級の上下、貧富の差、高齢者と若年層などのありとあらゆる分断と対立が深刻化している英国で、
11歳の子どもたちがエンパシーについて学んでいるのは特筆に値する。



「緊縮って何?」
「英国っていうコミュニティに会費を払っている。
 なぜって、人間は病気になったり、 仕事ができなくなったりして困るときもあるじゃない。
 国っていうのは、その困ったときに集めた会費を使って助け合う互助会みたいなものなの」
「その会費って税金のことだよね」
「そう。ところが、緊縮っていうのは、
 その会費を集めている政府が、会員たちのためにお金を使わなくなること」



あれほどW杯の日本代表チームに熱狂していた息子が、
日本が敗退するとあっさりイングランド代表チームに乗り換えた。応援するチームが複数あるのは
幸運なことだが、なるほど多様性の強さってこんなところにあるのかと思う。
こっちがダメならあっちがある、のオルタナティブが存在するからだ。
こっちしかない存在しない世界は、こっちがダメならもう全滅するしかない。



「仲間はずれ」「わざと喧嘩させようとしている」
・・・
残留派も離脱派も、息子のような年齢の子どもたちにしてみれば、
いい大人が互いに頑なになって辱め合い、言い争っているようにしか見えないのではないか。



「クール。うちの家族も、本物(オーセンティック)だなと思っちゃった」
「え?」
「いろいろあるのが当たり前だから」



「日本に行けば『ガイジン』って言われるし、こっちでは『チンク』とか言われるから、
 僕はどっちにも属さない。  だから、僕のほうでもどこかに属している気持ちになれない」
「それでいいんじゃない?、どこにも属さないほうが人は自由でいられる」
「だけど、本当にそうなのかな。
 どこかに属している人は、属していない人のことをいじめたりする。
 それは悪い部分だよね。
 でもその反面、属している仲間のことを特別に守ったりするでしょ、、、」



学校は社会を映す鏡なので、常に生徒たちの間に格差は存在するものだ。
でも、それが拡大するままに放置されている場所にはなんというかこう、勢いがない。
陰気に硬直して、新しいものや、楽しいものが生まれそうな感じがしない。
それはすでに衰退が始まっているということなんだと思う。





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中学校に併設されている二坪ほどの小さな市民図書室のヘビーユーザーです、
昔懐かしい貸し出しラベル、健在です、









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読書(た~わ)」カテゴリの記事

コメント

きぬえさん

お久しぶりです。リフォームで引っ越したり、戻ったりしばらくバタバタしていました。
3か月間ネットなしの生活でした(笑)。
この本、面白かったですよね。衝撃が強くて、一章読んだら、自分で消化できるまで家事したり
しながら読みました。
イタリア語の先生が、多様性って摩擦があるから最初は痛みがあるけど、それには慣れていくから
とおっしゃっていて、この本を読んだとき、先生の言われる意味がわかりました。

歯科医院の待合室で時々お会いする、認知症の奥様に付き添ってこられている方とお話しするのですが、このタイトルを新聞で見たことがあるとおっしゃってました。65年生まれで地元進学校出身と説明すると、「息子と高校で同級生だったはず!」と嬉しそうでした。見守りの間は集中して読んでしまう小説は二の足を踏むとおっしゃったので、この本は大丈夫とお伝えしました。

★もずさん、
本当にお久しぶりです、(^ω^)
お引越しにリフォーム、おつかれさまです。
きっと、素敵に模様替えしたお宅でのんびりとお過ごしのことと思います、(^▽^)/

イタリア語をならっていらっしゃるんですね、、、
本当に多才なお方で感心しきりです、、、

たしかに、この本はストーリーはないので、
途切れ途切れ、かみしめながら、余韻を楽しみながら読めますね

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