真藤順丈著 ”宝島” ★
『内容(「BOOK」データベースより)
英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。
固い絆で結ばれた三人の幼馴染み、グスク、レイ、ヤマコ。
生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。
少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり―同じ夢に向かった。
超弩級の才能が放つ、青春と革命の一大叙事詩!!
真藤 順丈(しんどう じゅんじょう)著』
米兵暴行事件、戦闘機墜落事件、コザ暴動、、、
時間に埋もれていた事件を、まざまざと教えてくれた、力強い一冊、
第160回直木賞受賞 ☀
★★★★★✨
以下に、心に残った一文を転記します、
渡るそばから崩れる桟橋のような世界を走りながら、
ちっぽけなお頭には収めきれない人の死を目の当たりにした。
幸福のひとかけらも知らない子どもが子どものままで事切れた。
敗戦のあとも飢えやマラリアに苦しみ、動物のように所有されて、それでも命をとりとめた島民は、
こうなったらなにがなんでも生きてやる!と不屈のバイタリティを涵養させた。
濡れねずみは雨を恐れない。裸のものは追いはぎを恐れない。
飢えと貧苦のあまりに居直ったほとんどの島民が、〝戦果アギヤー〟に名乗りを上げていった。
アメリカの倉庫や基地から物資を奪ってくる。
それが、戦果アギヤーだ。積み荷の伝票をごまかす軍雇用員も、
茂みからひょいと手を伸ばして米兵のお弁当をかすめる農婦も、
憲兵の車からガムやチョコをせしめる浮浪児も、みんながみんな戦果アギヤーだ。
赤ダマやラクダ、砂糖、食用油、メリケン粉、シーフードや果物の缶詰、軍用衣類、
運動靴、医薬品、バッテリー、カーキ色の五ガロン缶にいっぱいの酒。
アメリカに属する領分から奪ったものを、”戦果”と呼んで、すでにけりのついた戦争を
あえて続いていると見なすことで、強奪や窃盗のうしろめたさをごまかして、
故郷に居着いた占領者に一矢報いる雪辱戦として、一獲千金を狙った博打として
はたまた勝利の快感を得るための個人競技のようにして、
老いも若きもだれもが盗みを生活の糧にしていた。
あのときグスクは12歳だった。洞窟の外からは砲弾の音が聞こえていた。
グスクは逃げまわっていた。飢えと渇きから、島民同士のいさかいから、埋葬の恐怖から。
アメリカ―は投降しろと叫び、日本兵は投降するなと刀をふりまわす。だれもが混乱している。
降伏したがるものがいれば潔く自害したがるものがいて、乳呑み児の口をふさぐ母親を見た。
寝具に火をつけて一家を焼こうとする父親を見た。泣きながら刃物で切りあう家族を見た。
たしかにそのとき島じゅうの洞窟で、おなじような狂乱の光景がひろがっていた。
・・・
ありったけの人たちが狂死していくさまを見た、、、
・・・
あんなに慎重だった父ちゃんが、いつもおおらかに笑っていた母ちゃんが、
家族そろって自決を望んでいるのが分かったから。だから、グスクは逃げた。
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最近、訳あって、古い本ばかり読んでいます。
面白くないことはないのですが、古い本の話のスピード感が、今とは違うことに、
軽い違和感を感じています。
きぬえさんに本を紹介していただくのを、いつも楽しみにしています。
投稿: shinmama | 2019年6月30日 (日) 00:32
★shinmamaさま、
shinmamaさまがご紹介なさっていらした、「旅をする木」、とても、よかったです!、
こちらこそ、いつもおいしい情報も含めてありがとうございます、m(__)m
この本は、それは、それは、、、素晴らしい一冊です、、、
ダイヤモンドプリンセスの書庫にもありました、、、(*^。^*)
投稿: きぬえ | 2019年6月30日 (日) 21:04