佐竹千佐子著 ”おらおらでひとりいぐも”
『内容紹介
第158回芥川賞受賞
タイトルは宮沢賢治の詩「永訣(えいけつ)の朝」の一節。〈ひとりで死んでいく〉
覚悟を示す元の言葉を、転じて〈ひとりで生きていく〉という意味で使った。
74歳、ひとり暮らしの桃子さん。
おらの今は、こわいものなし。
結婚を3日後に控えた24歳の秋、
東京オリンピックのファンファーレに押し出されるように、故郷を飛び出した桃子さん。
身ひとつで上野駅に降り立ってから50年――
住み込みのアルバイト、周造との出会いと結婚、二児の誕生と成長、そして夫の死。
「この先一人でどやって暮らす。こまったぁどうすんべぇ」
40年来住み慣れた都市近郊の新興住宅で、ひとり茶をすすり、ねずみの音に耳をすませるうちに、
桃子さんの内から外から、声がジャズのセッションのように湧きあがる。
捨てた故郷、疎遠になった息子と娘、そして亡き夫への愛。
震えるような悲しみの果てに、桃子さんが辿り着いたものとは――』
深い論理思考の持ち主である著者の老いの境地。
共感できる年齢になった自分、、、
苦手な哲学書の様な趣でありながら、朴訥とした東北弁だからこその一冊。
★★★☆☆
以下に心に残った一文を転記します、、、
和裁の達人だったばっちゃ、、、
ばっちゃ、かわいそうだったな。白内障で目が見えなくなったのが信じられながったんだ。
大きく目を見開いて白く濁った目見せで、何度も聞くもんだから、おら邪険にしてしまった。
あのときは、小さくて分がらなかったが、何もできなくなるのが何ぼか心細かったか。
同じだな。この先何如になるべが。不安はおらばり、つまりおらばかりでねのす。
同じだ。たいていのことは繰り返すんだな。ばっちゃとおらは七十年隔てた道連れだな。
おらばりでないおん。なんとかなるおん。桃子さんは言葉を繰り返した。
その上になるようにしかならないという諦観を薄く敷き詰めた。これ以上暴れないように。
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