介護の日々に ②、幻覚の巻
まだ、実家に独居していた母の認知症が初期の頃のことです。
警察から電話がかかってきたこともあり、
様々なトラブルを起こしては、その度に車で小一時間の実家に駆けつけることになります。
何もなくても、しょっちゅう様子を観に行っていたある日のことを書くその前に、
認知症の掲示板で読んだ話を、先ず書きます。
お母さまを看ていらした、ある男性のお話しです、
それは、、、
『母は、居もしない虫がいると大騒ぎしては怯えるようになった、
そこにもいる、ほら、ここにも、大きな芋虫が這い回っていると、、、
そんなもの、どこにもいないよ、いい加減にしてくれ、しっかりしてくれよと、
しょっちゅう、そのやり取りに、苛立ち、疲れ切っていたある時、
“ほら、そこにいるわよ!、あなたの目の前の、ほら、そこに!”、と、指さすので、
“あ、ほんとだ“と、つまんで、パクリと食べるふりをして、
”お、これ、旨い!、おふくろ、また見つけたら、教えてくれよ、
これ、うまいよ!、 俺、また食いたい”、と言うと、、、
母は、それこそ、びっくりしていたが、
不思議なことに、それ以来、芋虫はピタリと現れなくなった、、、』
このお話しには、とても感銘を受けました、、、
やはり、親なんだな、子どもがヘンなものを食べるのを停めようとしたんだな、、、と、、、
そして、母の様子を観に行ったある日、
いつものように勝手口から入ると、母が、台所で真っ青になって立ち尽くしていて、
「玄関で、赤いカーディガンを来た女が、
さっきから、ここを開けろって、ずっと怒鳴ってるの」、と、怯えているのです、、、
「え~!?、ほんとに!?」、と、玄関から外に出て、おもむろに一服してから、家に戻り、
「いたいた、ヘンな女がギャアギャアわめいてたよ、
るっせ~!、二度とくんじゃねぇ!って、怒鳴りつけて、蹴とばしてやったら、
ごめんなさい、ごめんなさい、もう、二度と来ませんって、泣きながら帰っていったよ、
だから、もう二度と来ないから大丈夫だよ、、、」
ホッとして、笑顔を取り戻した母の顔をみながら、、、
・・・すごい!、、もしかして、わたしって、女優?、、、(^o^)
「いい加減にして!」、「しっかりしてよ~!」、
NGワードを連発して、正攻法でがっぷり四つに取り組んで、
お互いに傷つき、疲れ切って、玉砕する、、、よりも、
ちょっと、頓智をきかせて、省エネで乗り切る、
こんな即興の演技ができたのも、
芋虫を食べたふりをした話しを教えてくれた、
見知らぬおじさんのおかげ、なのでした、、、
・介護の日々に ③、物盗られ妄想の巻は、こちらから、、、
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幻覚の巻を読みながら、思い出しています。
「今晩泊めてくれはりまへんか?」
「泊まるとこあれしまへんねん・・・・」
「うどん一杯食べさしてくれまへんか?朝から何にも食べてぇーしまへんねん・・・息子が迎えに来るはずやねんけどなぁ~」
そのたびに
「ええよっ、泊って行ってや!」
「素うどんでもええかなぁ?」
「息子さん忙しいねんね、明日迎えにきはるんちゃう?」
痴呆症から認知症へと呼称変更されて久しいですが、お年寄りの計り知れない不安や戸惑いは
今も続いています。
決して幻覚ではなく、ご本人にとっては紛れもない事実ですから・・・
認知症をもつ人を一人の“人”として尊重し,その人の視点や立場に立って理解し,ケアを行おうとする認知症ケア等も発展しつつありますが医療者以外にもより理解が広がればと思います。
家族だけで抱え込んで悩むことをしないのがとてもとても大切だと思います。
もう30年余りも前のことですが私も「演技派女優」だったんですよ、きぬえさん!
投稿: 浪速リボン♪ | 2017年3月21日 (火) 16:34
お久しぶりです、(*^_^*)
>「ええよっ、泊って行ってや!」
なんか、いいんですよね~、関西弁だと、あったかくて、、、
お見事な演技派女優ぶりに、エールを送ります、、、
今、ひとり鬱々としていらっしゃるお方、
もう、爆発寸前のお方、、、
すこしでも、このブログがお役に立てたら、
気が紛れたらと、、、
浪速リボンさん、心強いコメントをありがとうございます!、
投稿: きぬえ | 2017年3月21日 (火) 19:38