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2016年2月21日 (日)

「首つったおやじ、無駄死にさせたくねえ 福島の農家」



Nkazuyatarukawalarge570


2/20
、朝日新聞より以下に転載します、、、


土と生きる豊かな暮らしは、あの日、一変した。
福島県須賀川市で農業を営む樽川和也さんは、
東京電力福島第一原発の事故後まもなく父親を自死により失った。
田畑も放射能で汚染された。
東京で20日公開のドキュメンタリー映画「大地を受け継ぐ」で苦悩を訴えている。
もう取り戻せない、償うことなどできない現実を聞いた。


 ――事故から5年。いまの状況を教えてください。
 「放射能は、こっちの中通りにも降りました。
田んぼも畑もビニールハウスも、みんなやられて、うぢらは職場を汚染されたんです。
だけど、東電は資産への賠償をしたわけでもねえ、放射能を取り除いたわけでもねえ。
ただ、5年の月日が流れただけ。たーだ被害かぶって苦しんで、うぢらはいったい、なあんなのって」
 「精神的な慰謝料として事故の年に8万円、翌年に4万円はもらいましたよ。ただ、それだけ。
12万円で、あとはもう黙ってろ、自然に放射能さがんの待ってろっつうことでしょう。
とても、そんなんで済む損害じゃねえべ」


 ――生前、お父さんは野菜の有機栽培に熱心だったそうですね。
 「環境のこと、よく考える人でした。
寒キャベツをつくり始めたのも、冬なら1回も消毒やんねくたって虫がつかねえからです。
雪の下で成長して、味もかなり甘くなる。地元の学校は全部うぢのキャベツを給食に使ってました。
本当に安全でおいしいものを子どもらに食わせられる、って喜んでた。
学校に呼ばれて、食の教育でしゃべったこともあんだ。そういうのが誇りだったの」

 「国から野菜の出荷停止の連絡が届いた翌朝、首をつりました。
収穫前のキャベツ7500個がダメになった。畑も汚された。
これから先、どうやって生きてくっぺ、と思い詰めたんでしょう」

 ――この件は、downwardleft














――この件は原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)の仲介で和解し、
東電も事故との因果関係を認めたんですね。
 「おやじの無念を晴らしてえ、無駄死にさせたくねえと思って訴えました。
ようやく和解して、賠償も出た。やっと東電も線香上げに来てくれる、謝罪してくれると思ってたんだ。
だけど違った。届いたのはファクスでした」


 ――除染は進んでいますか。
 「田んぼは、やりました。大型のトラクターで40センチぐらい耕し、ゼオライトをまいて、また耕す。
その粒に土の放射能が吸着する、それが除染だ、つうから」
 「だけど、おがしいっしょ。稲は放射能、吸わねくなるかもしんねえよ。
でも土にある絶対量は変わってねえんだから。
汚染された土の上で、俺たち毎日、朝から晩まで働いてんだよ。
将来どうなんのかな、いつか影響出んじゃねえかなって不安だらけだもん」
 「国との交渉のときも、ひな壇に座ってる農水省の人に向かって何度も言いました。
あんたら除染の『除』って、どういう漢字書くか、わがってんのかって。
たーだ混ぜただけで、なんで除染になんのって。
したら、みんな下向いて書類見てるんだ。その通りだって、思ってんじゃねえの」


 ――汚染された表土を、はぎ取れないものですか。
 「薄くはぎとれんなら、まだいがったの。
だけど事故の翌月に、耕していいっていう県の指示があったんだから。
俺も半信半疑だったんだけど、みんな耕したんだ。あそこで耕さねきゃよかったの。
1年は作物つくんな、補償は出すって言えば、いがったんだ。おっきな分かれ道だったんだ」
 「機械で、はぎとんのは簡単です。だけど40センチも土とっちゃったら、今度はろくな作物できねえから。
ふかふかのいい土、1センチつくんのに何十年もかかんだよ」
 「8代目の俺の代で、田んぼを荒らすわけにいがねから続けてんだ。
やんねで、ぶん投げとけば、すぐに荒れ地になる。周りにも迷惑がかかる。
それに、つくんねきゃあ賠償も出ねえし、収入もねえもん。生活できねえ」


 ――育てた農産物への賠償は?
 「販売実績があって損害を証明できるものにだけ出ます。
たとえば、事故前に2000円で売れたのが1500円にしかなんねえんだったら、
その差額は東電が賠償する。だけど、天候不順で値が上がったキュウリはこの2年、賠償出てねえんです。
事故前より高い値段で売れたんだから払いませんって。
おがしいっしょ。もしも事故なかったら、もっと高く売れてたんだよ。他県より安いんだよ。
もう、東電はカネ出したくねぐて、しょうがねえんだから」
 「俺たちだって請求もできねえようなものも、いっぱいあんだ。もう戻ってこねえものが。
うぢで毎年つくって食べてた椎茸(しいたけ)も、山のふきのとう、たらの芽も、
全部ダメになったけど一切出ねえ」 


――風評被害はどうですか。
 「うぢのコメも、11年のは放射能が最高値30ベクレルぐれえあったの。
規制値が500ベクレル以下(1キロあたり。12年度以降は100ベクレル)だったから
十分に大丈夫な数値なんだけど、やっぱ口に入れるもんでしょう。
俺も本当は食いだくねかった。まあ、よそで買うわけにもいがねから食いましたけど」
 「ただ、出荷すんのは、なんか悪いことしてる気がして。
だから東京の人が、福島のは食いたくねえという気持ちは、よくわかる。
こんなボロ原発あっとこの、わざわざ買って食いてえかえ。これは風評被害じゃねえよ。
根も葉もない噂(うわさ)が広まって売れねえのが風評被害だけど、じぇねえっしょ。
根も葉もあんだから。現実に降ったんだよ、放射能が」


 ――いまも検出されますか。
 「コメは去年もおととしも、放射能は未検出だったの。やれることはやったから。
放射能の吸収を抑える塩化カリウムも毎年まいてるし。全袋を検査して、もしも数値が出たら
出荷できないんだもの、いま福島のコメは、他県よりずっと安全だと思ってる」
 「実際、コメは売れてますよ。外食産業とか病院とか、福島県産とわがんねえところで。
表には出ねえだけで、すごい量が動いてんの。うまいから、福島のコメは。粘りと甘みがあって。
だから外食産業の人らは、いいみたいです。うまいコメを安く買えて」


――野菜はどうですか。
 「事故のとき、ハウスはビニールかぶってたから土が汚染されてねえっしょ。
もうハウスで作るっぺって思って、露地はほとんどやめました。キャベツも。また数値でんの嫌だから。
いまはブロッコリーですけど、安いすよ、買いたたかれて。福島県産だったら都会の人には関係ねえですもん」


 ――このところ原発が次々と再稼働しています。
 「しばらく日本は原発ゼロだったけど、その間に夜真っ暗になったとこってあった? 
電気、間に合ってたんじゃねえの。
原油のコストはかかってたかもしんねえし、原発のほうが燃料代は安いかもしんねえ。
でも事故が起きたら、これ片付けんのに、いぐらかかんのって。お荷物だよ、これ、ほんとに。
もう一つどこかで原発壊れたら、どうなんの、この国。税金上げて済む話かえ」


 ――いまの気持ちを誰に伝えたいですか。
 「声上げねえで黙ってたら、楽かもしんねえ。だけど俺は、おやじのことでメディアにも目を向けられてる
立場でしょう。ほかの農家のかたで、俺みたいに、おがしいって思ってる人は大勢いるんです。
そういう思いを訴えねえでいることは、やっぱできねえんすよね。それは、ずるい」
 「だから映画にも出たの。特に原発立地してるとこの農家の人に映画を見てほしい。
事故が起きたら、どうなるか知ってほしい。
人が作ったものはいつか必ず、ぼっ壊れんだ、自然の力にかなうわけねえんだって、
おやじが言ってた通りになったんだから。して、5年もたって、まだ誰も責任とってねえんだから」

     ◇

 〈たるかわ・かずや〉 1975年生まれ。青森の大学を卒業後、福島県いわき市で会社勤め。
            10年前、原発から65キロの須賀川市にある実家に帰り、農業を営む。


■東電主導の賠償、解決図れぬ 大阪市立大の除本理史教授
 原発事故の被害を受けた福島には、放射能のリスクを背負いながら、
日々の営みを続けている住民が大勢います。「事故前の状態に戻して」というのが当然の願いです。
農業者の場合、土地という、生活と生産の両方の基盤を汚染された怒りはひときわ大きい。
 こうした被害からの回復を図るうえで、大きな柱になるのが賠償です。
もちろん限界もあり、とても被害全体はカバーできません。金銭では償えない被害がたくさんありますから。
 しかし、樽川さんの例はそれ以前の話でもある。そもそも12万円が妥当な額と言えるでしょうか。
しかも、その対象は中通りの一部で、さらに南部ではこれすら出ない。
受けた被害とのギャップが大きすぎます。
避難区域内から指示を受けて避難した人には月10万円が支払われていますが、
この格差がまた、須賀川市のような区域外の人には大き過ぎると映る。
 どうしても金銭では埋められないものが、人の命です。
慰謝料が支払われても命は戻らない。せめて加害者が謝罪すれば、被害者の感情も違ってくるはずなんですが。
事故後の対応が新たな被害を生んでいる面が多々あります。
 土いじりや山菜採り、子どもの川遊び。
こういった自然の恵みも、放射能のせいで各地で失われてしまいましたが、賠償の対象外です。
福島の地で営まれていた自然豊かな暮らしは制度上、評価されていない。
そんな被害はなかったことにされています。
 それは、当事者である被害者の参加を欠いたまま、政府と東京電力の主導で賠償基準がつくられたためです。
加害者である東電が被害者への賠償基準を決め、請求の査定までしているのです。
 放射性セシウム137の半減期は30年もあり、復興も本来なら、数十年単位のスパンで構えるべきです。
まずは被害の実情をきちんと把握しないことには、解決を図る政策も生まれません。
 ただ現実は、逆の方向に進んでいます。
政府は昨年、避難者への慰謝料を17年度で打ち切る方針を示し、
自主避難者への住宅提供も来年の春で切れる見通しです。
 東京五輪を迎えるとき、原発被害への主な政策対応は終了しているかもしれません。
そのとき福島は被害から回復し、復興もなされたと果たして言えるでしょうか。(聞き手・萩一晶)

     ◇

 〈よけもと・まさふみ〉 1971年生まれ。環境政策論。著書に「原発賠償を問う」。
             近く「公害から福島を考える」を出版する













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