宮部みゆき著 ”ペテロの葬列”
内容(「BOOK」データベースより)
今多コンツェルン会長室直属・グループ広報室に勤める杉村三郎はある日、
拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇。事件は3時間ほどであっけなく解決したかに見えたのだが―。
しかし、そこからが本当の謎の始まりだった!事件の真の動機の裏側には、日本という国、
そして人間の本質に潜む闇が隠されていた!あの杉村三郎が巻き込まれる最凶最悪の事件!?
息もつけない緊迫感の中、物語は二転三転、そして驚愕のラストへ!
『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ待望の第3弾。
小泉孝太郎はドラマ化にあたって宮部みゆきによって指名され、主演に起用されたとのこと。
そう言われて読むと、なるほど、イメージ通りに思えてきます。
ぐいぐいと引きこまれましたが、ただ、何となく、肩透かしを食らったようなエンディングでした、、、
★★★☆☆
以下に心に残った一節を本文より転記します、
「以来、私のなかにはひとつの確信が生まれた。人間は基本的に善良で建設的だ。
だが、特定の状況に置かれると、それでもなお善良で建設的であり続けることができるタイプと、
状況に呑まれて良心を失ってしまうタイプに分かれる。
その<特定の状況>の典型的な事例が軍隊であり、戦争だ」
閉鎖的な極限状況だ。
「私の目には、ST(センシティブトレーニング)のトレーナーが、陸軍の上等兵たちに重なって見えた。
有能で冷静で、自分の持つ力をよくコントロールできるトレーナーならば、
STで良い効果をもたらすことができる。
私が聞かされた社員教育の成功例は、そんなケースだろう。
だが自殺者が出るようなケースでは、トレーナーが間違ったんだ。
方法を間違ったんじゃない。人間として間違ったんだ。」
極限状態のちっぽけな権力に酔い、己の中の獣性を開放した。
「誰かを攻撃するのが楽しいことがある。相手が追い詰められるのを楽しむんだ。
人間には誰しもそういう邪な部分はある。だがそれよりももっと邪悪なのは、
そうやって他人を駆り立てることだ。煽ることだ。そういう攻撃が正しいと他人の頭に刷り込むことだ」
STは、トレーナーという立場の人間をそのように仕向ける危険を孕んだシステムだ。
・この本は市民図書でお借りしました
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