ロバート・B・パーカー著 ”初秋”
内容(「BOOK」データベースより)
離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしい。
スペンサーにとっては簡単な仕事だった。が、問題の少年、ポールは彼の心にわだかまりを残した。
対立する両親の間で駆け引きの材料に使われ、固く心を閉ざして何事にも関心を示さない少年。
スペンサーは決心する。ポールを自立させるためには、一からすべてを学ばせるしかない。
スペンサー流のトレーニングが始まる。
人生の生き方を何も知らぬ少年と、彼を見守るスペンサーの交流を描き、
ハードボイルドの心を新たな局面で感動的に謳い上げた傑作。
再読。
スペンサーとホーク、そして、スーザン・シルヴァマン。
彼らが織りなす素敵なトライアングル、、、
「ゴッドウルフの行方」から、また、読んでみたくなりました、、、
以下に心に残った一文を転記します、、、
「なぜなら、その程度の頭しかないからだ。
自分たちがなんであるのか、あるいはそれを見いだす方法を知らない、
立派な人間とはどんな人間であるのか知らないし、それを知る方法を知らないからだ。
だから、彼らは類型に頼る」
「どういう意味?」
「つまり、きみのお父さんは、たぶん、自分が立派な男であるのかどうか確信がもてないし、
そうではないかもしれない、という疑念を抱いているのだろう。
そうでないとしたら、かれはそのことを人に知られたくない。
しかし、彼は、どうすれば立派な人間になれるのか、知らない、
だから、誰かから聞いた単純なルールに従う。自分で考えるより容易だし、安全だ。
さもないと、自分で判断しなければならない。
自分の行動についてなんらかの結論を下さなければならないし、
その場合、自分が考えたことが守れないのに気付くかもしれない。
だから、安全な道を選んだらいいじゃないか、と考える。
世に受け入れられる回路に自分のプラグを差し込むだけですむ」
「よくわからないな」
「無理もない。別の言い方をしよう。かりにお父さんが、自分はバレーが好きだとか、
息子のお前がバレーが好きだ、と人々に言った場合、
彼は、あれは男がやるものではない、という男たちに出会う危険を冒すことになる。
その場合、彼は、男とはなんだ、それも立派な男とはどういうものか、
考えなければならないが、彼はその答えを知らない。
そう考えてくると、彼はひどく脅える。お母さんの場合も同じだ。
だから、彼らは、世間一般に通用すること、その問題を避けることのできる因習的な考え方に固執するし、
それで満足かどうかはわからないが、少なくとも崖の縁から下をのぞかなくてすむ。
心底から脅える必要がなくなる」
「彼らは脅えているようには見えないよ。確信してるみたいだ」
「それが真実を知る手がかりの一つなんだ。
極度に断定的であるのは、脅えているか、愚かか、あるいはその両方なんだ。
現実は不確定だ。確信を抱く必要のある人間が大勢いる。
一般にこうあるべきだと考えられている道を探して辺りを見回している。
世の中に対して、テレビ・コマーシャル的な見方をするようになる。
ビジネスマンは、ビジネスマンはこうあるべきだ、というあり方を学ぶ。
大学教授は、教授はこうあるべきだ、ということを知る。
建設労務者は、建設労務者はこうだ、ということを知る。そんな、こうあるべきだ、という姿に
なるべく努力をすることに生涯を過ごして、そうなれない場合は非常な不安にかられる。
ひそかなる絶望状態に陥るのだ」
・・・
「あんたはそうじゃない」
「そう。おれはその反対の度合いがすぎる、と時どきスーザンに言われるよ」
「例えば、どんなこと?」
「例えば、おれは他人の期待の裏をかくことに力を注ぎすぎる」
「よくわからないな」
「そんなことはどうだっていいんだ。要は、自分はこうあるべきだ、という考えにとらわれないことだ。
自分にできるものなら、自分の気にいっていることをするのがいちばんいい」
「そうしてるの?」
「してる」
「今でも?」
「そうだ」
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コメント
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きぬえさん
読みたくなりましたよ!!
投稿: Tao | 2014年10月25日 (土) 20:52
ハードボイルドの世界へようこそ♪
大好きなホークに会いにいらしてください、、、
FBのコメント欄に知人より、わたしも知らなかったのですが、
「よしもとばななさんも初秋のファンですね、あと、村上春樹さんも。」
とのことです!、(*^_^*)
投稿: きぬえ | 2014年10月26日 (日) 08:35