関三脚編 喜怒哀楽の日系百年史―北米川柳道しるべ
そのサニー関さんこと、関三脚さんの編んだ、
喜怒哀楽の日系百年史―北米川柳道しるべ、、、
海を渡り、見知らぬ異国の地に移民して、苦難の時代を歯をくいしばって耐え抜いた人々の読む川柳。
彼らの悲哀、忍耐、勤勉さ、努力、誠実さ、そして、ユーモアを失わぬ、たくましさ、、、
数限りない川柳のひとつひとつに、血と汗と涙が沁み込んでいます。
それらを、時代の流れに沿って編集する、気の遠くなるような作業、
時の流れに埋もれてゆく、
市井の人々のありのままの姿を、気持ちをところどころで補うような見事な歴史観。
第一級の歴史書に強く心を動かされました、、、
そのひとつ、例えば、アメリカを震撼させた、パトリシア・ハースト誘拐事件。
その裏に、こんなことがあったとは、、、
『70年代、ウェンディ・ヨシムラの特異な事件があった。
彼女はベトナム戦争反対、民族解放の立場から過激なグループを結成。
大富豪のハースト家の孫娘、パトリシア・ハーストを「洗脳」して
銀行強盗、貧困地区への食糧配布などに参加させ、“義盗・ネズミ小僧”ばりの抵抗を見せたあげく御用!、
排日で蓄財したハースト家への「かたき討ち」をした彼女が、
おかっぱ頭の童顔であったこともあり、日系社会からたちまち15万ドルの裁判費用が集まった。
弱者救済、反体制運動の一翼を担った彼女は今、静かにオークランドで水彩画を教えている。
ランドルフ・ハーストの豪邸「ハースト・キャッスル」は、有名な観光地だが、
ある二世は私にこう言った。
「彼は所有した二十近いメディアすべて使って、排日を先導した張本人だ。
ハーストキャッスルは、日本人の涙で建ったようなもの。俺は絶対に見に行かない」
・反戦を叫び学書を閉じたまま』
以下にも、本文より、転記します、、、
・こちらにも金の成る木は無いと書き
明治29年、シアトル、翌年にサンフランシスコ航路が開設されると、
日本人が中国人に代わり安価な労働力となる。
この背景に、大陸横断鉄道を敷設し終わった労力(ク-リー)や、鉱夫たちを、
定住させず半強制的に本国へ送還し、”別口の”働き手を物色していたアメリカ側の事情があった。
中国人を拝斥したあと迎えた日本人は、予想以上の働きを見せ、競合する白人たちは慌てだす。
移民人口は、1920年、11万人を超えるころ排日運動は険悪となり、
24年の排日移民法で門戸を閉ざされてしまう。
一方、明治政府の富国強兵策は農民にしわ寄せがゆき、凶作・高税・兵役などに悩む多くの若者たちは、
借金をしても新天地に賭けた。何が待ち受けているかも知らず、故郷へ錦を飾る夢を追って、、、
・犬のよな名前もらって皿洗ふ
子はアメリカ人として学校に行き、イジメにあうことも、、、
・戸口まで泣かずに来たがわっと泣き
日本は飛行機製造に欠かせぬアルミ不足と聞き、タバコをパックした銀紙を丸めて送ることが流行。
毎日せっせと町へ出て銀紙拾いに熱中し、、、
・銀紙を拾ふ銃後の老棄民
生れ落ちてから、損な巡り合わせばかりの二世は、常に寡黙を守る。
アメリカ市民として優秀でありながら、思想や感情を表に出さない気質は、柵の中で一層堅固となった。
・ドラフト(徴兵)の記事を見る子に不安に居
モンタナ州ミゾラ収容所近郊で、1905年頃に死んだ日本人線路工夫の墓、53基を発見、供養した。
ワイオミング、ネバダ、アイダホ、ユタ、コロラドなどでも、鉄道や鉱山事故で日本人の犠牲者は多い。
朽ちた木杭に、「A JAP」と書かれ、9割は20代。
新参の私たちは、彼らの敷いたレールの上にいる。
・一世の枕木あって客車行く
88年、レーガン大統領は強制収容所の処置を詫び、ひとり2万ドルの賠償金を決定。
6万3千人(子孫も含む)に12億5千万ドルを支払う。
正式な謝罪にアメリカの良心と、日系新世代の政治参加を感じる。
他州出身でなく、カリフォルニア州知事出身のレーガンだけに、
日本人の苦労や活躍を熟知していたに違いない。
・温かい善意レーガン氏の土産
●このご本を顔見知りのお方にお貸しします、、、
★ 6/19追記、関さまより、、、
川柳は俳句と違って季語などの制約がなく、テーマは人間生活ですから、
アメリカに渡った日本人の良き伴侶でした。
特に、苦汁をなめた日本人排斥の歴史の中で、
ユーモアを忘れず、笑いを分かち合って、日本人同士のきずなを深めるのに役立ちました。
こんなに短く、又奥深い文芸を持っている国は日本ぐらいでしょう。
すぐれた文化を持っていることを、有り難く誇りに思います。
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