色川武大著 “うらおもて人生録”
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内容(「BOOK」データベースより)
優等生がひた走る本線のコースばかりが人生じゃない。
ひとつ、どこか、生きるうえで不便な、生きにくい部分を守り育てていくことも、大切なんだ。
勝てばいい、これでは下郎の生き方だ…。著者の別名は雀聖・阿佐田哲也。
いくたびか人生の裏街道に踏み迷い、勝負の修羅場もくぐり抜けてきた。
愚かしくて不格好な人間が生きていくうえでの魂の技術とセオリーを静かに語った名著。
いねむり先生 にまた会いたくなって手にとった一冊。
賢く、心やさしきアウトサイダーの、
心和らぐ、暖かい一冊。
ひとこと、一言が、静かにこころに染み入ります。
以下に本文より、、、
まず第一に、限りなく素直になること。
第二に、しっかり胆力を練って、自分の走り方を考えること。
まず、ちょっとした自信をプレゼントするな。
なんでもいいんだ。彼の話を真剣に聞いてあげる。それだけでもいい。
「おい、もう十五分ほど、居ろよ」
長所には必ず欠点につながる裏生地がついていて、
その両方を掌の中で馴らさなければ安定しない。
始末の悪いのは、優等生であろうと劣等生であろうと、何かを思い込んでいて、
たとえば学校の成績などを唯一の尺度と思って、そこから動こうとしないタイプだね。
< なにもかもうまくいくということはありえない >
もちろん気力は大切だよ。
そのうえで、技術としては、どこで勝ち、どこで負けるか、だ。
それで平常よりも大振りになって三振する。
ここのところですでに彼は小さなミスをやってるんだね。
そのミスが溜まっていって、スランプがくる。
ピークからすぐにスランプに移行するわけじゃないんだ。
スランプは、ピークのときに勢いあまってフォームを崩すことから次第にやってくるんだ。
ことわっとくが、フォームに既製品はない。自分で手縫いで作るんだよ。
ばくちは、自分の都合しか考えない。自分が勝てばいい。
これは下郎の生き方なんだな。
…人格破産はこういう部分から拡がっていく。
ところがだんだんそうもいかなくなってね。
ばくち打ちをやめても、星勘定だけはしていたからね。
年を取るにつれて運がツクということが、少なくなってくるんだね。そのうえ、
身の回りには、負け越しにつながるような大黒星がぐるりととりまいているんだ。
健康の面でも、人間関係もそうだし、仕事もだんだんむずかしくなる。
もう、負けをひきこんでバランスを採るなんて、キザなことをいってられない。
一生懸命、白星をひろっていかないと勝ち越すのもむずかしい。
だがやっぱり、ここが勝負というときには、限度に近く力を出す。
その代わり、そうでないときは一円の無駄も惜しむ。コツはこの落差なんだね。
どの経営者も食えない顔つきをしていたけれど、そういう顔つきというものは、
専門外のところでは案外もろいものだと知っていた。
人を誘惑するという点にかけては、当時すでに俺は筋金入りの技術をもっていたからね。
経営者がたわわに実った果物のように見えてしかたがなかった。
今度は優等生諸君に申し上げる。君たちだって弱点があるよ。
それは、負けなれてない、ということだ。
どんな長所にも欠点が含まれている。欠点にだって長所があるようにね。
ずるい生き方、人のわるい生き方というものは、相手にも大量得点を許さないけれど、
そのために当方も得点しにくくて、レースが小さくなってしまうのだね。
® 2012年10月にアップしたリユース記事でした
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