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2013年7月21日 (日)

拝啓 有権者の皆さんへ (読売新聞より)



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読売新聞7/20朝刊一面より 転記します。

                         特別編集委員 橋本五郎

国政選挙を前に「有権者の皆さんへ」と呼びかけて、もう10年近くなります。
十年一日のごとく言い続けてきたことがあります。

―― 皆さんはどの党に、誰に投票するか迷っているのではないですか。
でも、「最善の選択」など求めても無理なのです。
政治の世界では福澤諭吉の言うように「悪さ加減の選択」しかないのです。
そう考えて投票した方がいいと思います。

しかし、今度はそうでないかもしれません。
投票日が明日に迫った参院選は、、、










その意味も争点もこれまでになく明確だからです。
何よりも大きいのは「ねじれ」が解消されるかどうかです。
政権与党が参院で過半数を確保していないため、連立政権にならざるを得ない。

連立したとしても参院で多数にならないという状況が続いてきました。
「ねじれ」によって、慎重で丁寧な国会運営が行われてきたという見方もあるでしょう。
でも、「決められない政治」に陥った一番の要因が「ねじれ」にあったこともまたまぎれも無い事実です。

自公で過半数か、自民単独で過半数かという「ねじれ」解消の度合いの違いはありますが、
あなたの一票でどうなるかが決まるのだけは間違いありません。

政策的な争点もはっきりしています。安倍政権の経済政策であるアベノミクスをどう評価するかです。
円安、株高で日本経済が明るい方向に進んでいるとみるか、
それとも輸入物価の値上がりなどで国民生活が脅かされているかで賛否が分かれます。

憲法改正の是非が選挙の争点になるというのは絶えてなかったことです。
改憲に積極的な自民、維新、みんなで3分の2を獲得するのか、
慎重な公明がどう対応するのか、注目点はいろいろあります。

読売新聞は20年前に憲法改正試案を発表しております。
私も作成に加わりましたが、
当時は改正を口にするだけでも、マスコミ他社も含めて激しい批判に晒されました。
それが今や選挙の争点として俎上(そじょう)に上がっているのです。隔世の感があります。

ここは改めて、何のための改正なのか。改正の全体像はどういうものなのか。
なぜ改正はいけないのか。96条改正を先行する事の意味は何なのか。
それぞれの党の公約を吟味しながら考える必要があります。

投票率の低下が心配されています。政権を選択する衆院選よりも
参院選の投票率が低くなるのは避けがたいことです。
前哨戦ともいうべき東京都議選の投票率はかなり落ちました。

各種の世論調査で、選挙結果が予測でき、
積極的に投票所に行く気にならないと思ってる人もいるかもしれません。
でも棄権は何ら積極的な意味を持ちません。
単なる権利の放棄です。国民として果たすべき義務からの逃避でしかありません。

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世紀フランスの啓蒙思想家 JJ・ルソーは『社会契約論』の中でこんなことを書いています。

イギリスの人民は自由だと思っているが、それは大まちがいだ。
彼らが自由なのは、議員を選挙する間だけのことで、
議員が選ばれるやいなやイギリス人民は奴隷となり、無と帰してしまう。

直接民主主義のルソーらしい言い方です。
でも投票もしないようではルソーにも笑われてしまうことになります。





・五年後、十年後、この投票結果を引きうけるのは、ほかならぬわたしたち、自身なのです。










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コメント

きぬえさん
おはようございます。ご無沙汰しています。
昨日、選挙から帰ってからきぬえさんのブログを拝見しました。
今朝、私たちがどうしても受かってほしくなかった某企業の人が当選した選挙結果を見ながら「5年後10年後、この結果を引き受けるしかないね・・。」とつぶやき、夫もそうだねと言いました。

選挙が始まる前から夫は「前の政権への失望感が強いから、やっぱり行きつくところまで右に振れないと軌道修正はむつかしいんじゃないか。」と言っていました。なんだか妙に納得です。

うちの田舎の辺りにも、本当に営利主義を前面に押し出す福祉企業が参入してきました。

もずさん、
W氏でしょうか、、、
昔、彼の本を読んでいたく感激したのですが、、、
なんだか、ダブルスタンダードというか、だまされたような気がします、、、

ご主人様のおっしゃる通り、民主党への失望感はどうにもならないと思います。
が、同時に、長きに渡って、ひとつの党にだけ政権を任せっぱなしにしてきたわたしたち有権者にもその責はあるとも思います、、、

憲法も、TPPも、社会保障も、、、この国はどうなってゆくのでしょうか、、、

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