長谷川英祐著 ”働かないアリに意義がある“ ☆
内容紹介
女王バチのために黙々と働く働きバチや、
列を成して大きな荷物を運ぶアリたちに共感を覚えた経験は誰にもあるはず。
しかし実際に観察すると、アリもハチもその7割はボーッとしており、
約1割は一生働かないことがわかってきた。
また、働かないアリがいるからこそ、組織が存続していけるというのである!
これらを「発見」した著者による本書は、
アリやハチなどの集団社会の研究から動物行動学と進化生物学の最新知見を紹介。
人間が思わず身につまされてしまうエピソードを中心に、
楽しみながら最新生物学がわかる科学読み物である。
生命の不思議に感動すると共に、
読後には社会・会社・家族などへの考え方が少しだけ変わる、ラクになる。
キャッチ―なタイトルに魅せられて手にとりました。
生命科学者、柳澤桂子さんの本 に続いて、
真摯な学究の徒の有り様に、またしても心を打たれました。
昆虫たちの生へのエネルギー、、、
それは、わたしたちに、真の知恵と力を授けてくれます。
★★★★☆
とても勉強になりました!
以下に本文より、、、長文です、、、
ハチもアリも、非常に若いうちは幼虫や子どもの世話をし、その次に巣の維持に関わる仕事をし、
最後は巣の外へエサを取りに行く仕事をする、という共通したパターンを示すのです。
・・・
ハチでもアリでも巣の中は安全な場所です。
またすでに長く生きた個体の余命が、生まれたばかりの個体のそれより短いのは言うまでもありません。
この二条件を考え合わせると、あるワーカーが生まれた場合、
初めのうちはできるだけ安全な仕事をしてもらい、
余命が少なくなったら危険な仕事に「異動」してもらうことが、
労働力を無駄なく使う目的に叶うことになります。
つまり、年寄りは余命が短いから死んでも損が少ない、というわけです。
おバカさんがいたほうが成功する
なんと、お利口な個体ばかりがいるより、
ある程度バカな個体がいる方が組織としてはうまくいくということです。
つまり腰が軽いものから重いものまでまんべんなくおり、しかしさぼろうと思っているものはいない、
という状態になっていれば、司令塔なきコロニーでも必要な労働力を必要な場所に配置できるし、
いくつもの仕事が同時に生じてもそれに対処できるのです。
様々な個体が交じり合っていて、はじめてうまくいく点がキモです。
働いてばかりいるワーカーは早く死んでしまうらしいことは推察されています。
少し前までは野菜のハウス栽培で、花を受粉させて結実させるのにミツバチが使われていました。
ところが、そうやってハウスに放たれたミツバチはなぜかすぐに数が減り、
コロニーが壊滅してしまうのです。
ハウスではいつも狭い範囲にたくさんの花があるため、ミツバチたちは広い野外であちこちに散らばる花から
散発的に蜜を集めるときよりも多くの時間働かなければならず、厳しい労働環境に置かれているようです。
この過剰労働がワーカーの寿命を縮めるらしく、
幼虫の成長によるワーカーの補充が間に合わなくなってコロニーが壊滅するようです。
なぜそうなるのか?、働いていたものが疲労して働けなくなると、仕事が処理されずに残るため
労働刺激が大きくなり、いままで「働けなかった」個体がいる、
つまり反応閾値が異なるシステムがある場合は、それらが働きだします。
それらが疲れてくると、今度は休息していた個体が回復して働きだします。
こうしていつも誰かが働き続け、コロニーのなかの労働力がゼロになることがありません。
一方、みながいっせいに働くシステムは、同じくらい働いて同時に全員が疲れてしまい、
だれも働けなく時間がどうしても生じてしまいます。卵の世話などのように、
短い時間であっても中断するとコロニーに致命的なダメージを与える仕事が存在する以上、
誰も働けなく時間が生じると、コロニーは長期間は存続できなくなってしまうのです。
つまり誰もが疲れる以上、働かないものを常に含む非効率的なシステムでこそ、長期的な存続が可能になり、
長い時間を通してみたらそういうシステムが選ばれていた、ということになります。
働かない働きアリは、怠けてコロニーの効率をさげる存在ではなく、
それがいないとコロニーが存続できない、きわめて重要な存在だといえるのです。
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