宮本輝著 "草原の椅子”
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内容
かつて出会った古老の言葉が甦る。
「あなたの瞳には、使命の星がある」。
だが、五十歳を迎え、憲太郎はいまだ「天命」を知らない。
不況のただなかで苦闘する経営者。
母に虐待された少年。
離婚後の新たな人生を模索する女性。
満たされぬ心を抱いた人間たちが、憲太郎と不思議な縁で結ばれていく。
日本への絶望が募るなか、憲太郎は人生を変える旅に皆を誘う。
シルクロードのタクラマカン砂漠。
日本列島より広い、「生きて帰らざる」神秘の地…。
心が癒される瞬間を圧巻の筆致で描き、連載時から大反響を呼んだ傑作。
父を早くに亡くしたわたしは、、薄れる記憶の彼方から、
その言葉を引き出しては、何度も何度も、かみしめています。
そんなわたしにとって、耳をそばだてたくなる、含蓄に富んだおじさんたちの会話を、
以下に本文より、書き写しました、、、
子、日わく、巧言令色、鮮(すく)なし仁
直きこと、その中にあり
人間も組織も、生命力が弱くなると、見栄とか虚栄心とか体面とかにこだわるようになる。
私利私欲と嫉妬ばかりが頭をもたげてきて、大ナタがふるえなくなり、底無しの悪循環が始まる。
「日本は水のなかの角砂糖や、とめどなく崩れてとけていきよる。」
五十歳という年齢は、まだまだ未来を孕んではいるが、死もまた身辺にまといついている。
なんだか少し具合が悪くて病院に行ったら、
あと半年の命だと宣告されても不思議ではない年齢でもあるのだった。
強気でなければ出来ない退却というものもあるのだ。
強気にならなければ揚げられない白旗があるのだ。
「・・・、強気で行こうぜ」
ロシアの作家、チェーホフが、かつて恋人に送った手紙に、
・・・ごきげんよう。なによりも、快活でいらっしゃるように。
人生をあまりむずかしく考えてはいけません。
おそらくほんとうはもっとずっと簡単なものなのでしょうから。
上下巻にわかれており、わたし的には、圧倒的に上巻のほうが面白かったです。
★★★☆☆
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かつて、宮本輝の本はよく読みましたが、「草原の椅子」は読んでいません。映画の撮影も日本映画にしては、スケールが大きいですね。
チエーホフの手紙「人生をあまりむずかしく考えてはいけません。おそらくほんとうはもっとずっと簡単なものなのでしょうから。」・・・まったく同感です。
投稿: eiko | 2013年3月 2日 (土) 20:41
eikoさんは、宮本輝の優駿は読まれましたか、、、
初めて読んだのが、優駿で、今でも彼の作品の中では一番です、、、(^-^)
チエーホフの言葉、わたしも打たれました、、、(*^_^*)
投稿: きぬえ | 2013年3月 3日 (日) 08:49