高月園子著 ”ロンドンはやめられない”
内容(「BOOK」データベースより)
クリスマスが嫌いで、ゴシップ大好き。
親は子供の成功を恐れ、物欲がなさそうでダイヤには目がくらむ。
在英25年の駐在員夫人が明かす紳士淑女の実態は、品がいいのか悪いのか。
イギリス式子育て、人生を狂わされる駐在員たち、海外生活ならではの失敗談など、
おかしくも愛おしい珠玉のエッセイにちりばめられた幸せの秘訣。新エッセイも満載。
憧れのイギリス駐在員の奥様の暮らしぶりはいかに、、、
興味津々で手にとりましたが、これが、なかなかに勉強になる一冊だったのです。
巷では、下品な井戸端会議とか散々のようですが、わたしは、面白かった~♪
それは、わたしが、うわさ好きのミーハーだから?、、、
著者は、とても頭のいい女性だと、わたしは思います。
以下に本文より、、、
所変わって、イギリス人の奥様のお付き合いはコーヒー・モーニングから始まります、、、
・・・
数え切れないほどのコーヒー・モーニングに呼ばれましたが、ホームメードのクッキーが出たことは
一度もありません。だいたいイギリス人は日本人ほど手作りや手焼きに価値を見出さないようです。
呼ばれた人も手ぶらで行くのが普通。
宝石店のショーウインドーは色石が少なく、ダイヤモンドオンリーと言ってもいいほどですが、
そこには必ず、ダイヤの磁力に吸い寄せられた女性が数人(わたしも)、
蛭のようにペタッと張りついています。
ダイヤモンド指輪などきらびやかすぎて同窓会やパーティなど見栄張りオケージョンにしか
はめられないと考える日本人と違い、西洋女性たちは、
ダイヤがけっして傷のつかない硬い石なのをいいことに普段使いします。
イギリスらしさやイギリス人らしさを表すこの「イングリッシュネス」という言葉は、
辞書に載っている正式な言葉ではありませんが、イギリス人自身が自嘲的に使うのを耳にします。
私の解釈では、自然を愛し、素朴で洗練されてなくて、外国語が苦手なことに劣等感を持ち、
(小学校から延々とフランス語やスペイン語を習うのに全然話せない)、
我慢強く、読書好きで質素、服装が野暮ったく、舌の感覚が鈍感、、、ああ、きりがない。
そして彼らは雨の中を濡れながら歩くのが平気で、荒野の散策を愛し、
氷のように冷たい水の中で泳ぐことを好みます。
でも、どうしてもイギリス人が熱心に働く姿を見たいという方は、
閉店間際のショッピングセンターを訪ねることをお勧めします。
まるで人が変わったようにテキパキと客を追い出したり、まだ客が並んでいるのにレジを閉めたり、
轟音とともに容赦なくシャッターを力いっぱいひき下ろしたりとーーー生き生きと労働するその姿に、
イギリス人観が変わること、請け合いです。
Only an idiot can be always happy. 「バカだけがいつもハッピーでいられる」
思い起こせば、小学生の頃、おこたで宿題をしていると、母は編み棒を動かしながら、
私の教科書を覗きこみ、「すごく難しいことやってるのねぇ。お母さんにはもう全然わからないわ」
なんて、よく感心してましたっけ。今ならそんなの嘘だったってわかるんです。
・・・
今でもよく、亡き母のそんなやさしい言葉を思い出します。
昔の母親たちには、簡単に子供に自分を越えさせてやるおおらかさがありました。
そして、昔の父親には、子供の土俵に降りていかない分別がありました。
うーん、経験者として言わせてもらえば、
専業主婦って、そんなにいいものでも、楽なものでもないんだけどな。
おもしろいから、楽しいから、やりがいがあるからするのなんて仕事じゃない。
自己実現のためなんて、ちゃんちゃらおかしい。それは趣味というものです。
または、仕事ではなく、”オシゴト”です。
日本では、特に大都市の女性たちは一般的に、結婚するまで親元を離れないし、
たとえ独立したとしてもおんぶに抱っこなので経済的に余裕があるのです。
でも、そんな生き方では精神的に自立できるはずもなく、したがって皆と同じ雑誌を買い、
皆と同じ読者モデルをお手本に、皆と同じ格好をしてしまっていても、その滑稽さに気づかないのです。
・・・
そう、自分がないからこそ、「自分なんとか」という言葉にからきし弱くて、
マスコミに踊らされてしまうのです。
その代表が「自分探し」「自分磨き」「自分にご褒美」の3J。
彼女たちは雑誌の「自分探し」という言葉を見るたびに、
「そうよ、私はこんなことをするために生まれてきたんじゃない」
「もっと私の能力や個性が生かせる、やりがいのある仕事があるはず」
「もっとかっこいい、皆に憧れられる仕事に就きたい」と焦る。
そして、語学、リフレクソロジー、アロマ、ピラティス、フラワー・アレンジメント、脚本、
カウンセリング・・・と流浪の旅が始まるのです。
それ自体は、あまり個性的だとはいえないけれど、ちっとも悪くなんかない。
批判する気なんてさらさらない。若いときは迷いが多くて当然ですもの。
でも、自立して自分の稼いだお金で自分探しを何年しようが、死ぬまでしようが勝手だけれど、
母親に洗濯や食事の用意やアイロンがけまでさせながら、
「自分探し」と「自分磨き」に駆けずり回り、疲れ果てた挙げ句に
「自分にご褒美」をあげるのは大人として浅はかすぎないでしょうか?
せめてご褒美くらいは自分を支えてくれている両親にあげたいですね。
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こんばんは。実は私も本の虫です。
新しい図書館が駅の近くに出来ましたので、更に磨きが掛かっています!(^^)!
相当辛口な読者だなあって思いますが、それも読書の秘やかな愉しみですね。
良く目にする「自分なんとか」・・・の言葉には嫌な感じを持っていましたが、
こんな風に心地よくバッサリ書いて頂くと、快感を覚えますね!
そしてその快感は私自身に・・・(^_^;;)
辛口に自分を見てみたいので 私も読んでみましょう。
投稿: Tao | 2013年2月22日 (金) 00:09
Taoさん、
そうそう、わたしも、自分何とか、苦手なんです~、(^^ゞ
なので、やっぱり、このくだりに快哉を叫びたい気分でした、、、!
Taoさんの辛口ブックガイド、ブログでぜひお願いします、(*^_^*)
投稿: きぬえ | 2013年2月22日 (金) 09:15