宮本輝著 ”約束の冬“
内容(「BOOK」データベースより)
壊されたパテックの懐中時計の持ち主を探す桂二郎の前に、妖艶な中国女性が現われる。
そしてもう一人、桂二郎を訪ねてきた若い女性は、昔別れた恋人の娘だった。
一方、留美子は謎の手紙の主について、次第に手がかりを得ていく―。
人は何を拠り所にして生きていくのかを問う、宮本文学の新しい傑作。
上下巻
時計の謎、淡い恋の行方などに絡めて、
人生の機微が示唆に富んでいて、面白く読みましたが、
読後に、何か小さく引っかかるものがあるのはなぜでしょうか、、、
★★★☆☆
以下に、本文より心に残ったひとことを、、、
荒れる冬の海の中から、
「お前には、なんにも怖いものはないんだよっていう、やさしい言葉が聞こえたの」
「ダウン症の子って、生まれついて体が弱いから、、、。でもすごく可愛いんだよ。
世の中にこんなにきれいな心の人間がいるのかってうっとりするよ。
二歳か三歳の心のままだからね。二歳や三歳の子が、人に意地悪してやろうとか、
人を騙してやろうとか、困らせてやろうとか、そんなこと考えないもんね。
無垢って言い方があるだろう?、二十八歳なのに二歳か三歳の無垢のままなんだ。
インフルエンザで肺炎を起こして、医者が覚悟した方がいいって言ったとき、
俺、病院で声をあげて泣いちゃった。死なないでくれ。
生きててくれるだけで嬉しいんだった、ほんとうにそう思ったよ」
「でも親が年を取ったり、いなくなってからが大変だよなァ」
「俺がついてるよ」
「よき細工は少し鈍き刀を使ふといふ。妙観が刀はいたく立たず」
・・・妙観(みょうかん・名工)の刀は、それほどよく切れない。
『徒然草 第二百二十九段』
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