曽野綾子著 " 老いの才覚” ★
『内容(「BOOK」データベースより)
年の取り方を知らない老人が急増してきた。
超高齢化の時代を迎える今、わがままな年寄こそ大問題。
自立した老人になり人生を面白く生きるための7つの才覚の持ち方。 』
わたしの、尊敬するロールモデル、
曽野綾子さんの、人生のガイドブック。
★★★★★
以下に、本文より、、、
人生には、いいことも悪いこともあります。生きていれば、人に誤解されることもあります。
どうして自分だけが病気になったのだろうかとか、
自分の家だけが倒産したんだろうとか思うこともあるでしょう。
その悲しみや恨みをしっかり味わってこそ、人生は濃厚になるのだと思います。
老いて、自分の能力がだんだん衰えてきたら、
基本的に、生活を縮めることを考えなくてはいけません。
たとえば私はいまだに、安いマーケットに行くと、食糧をたくさん買い込んで来て、
サンマの味噌漬けなどを作ったりしていますが、
それをやる体力がなくなってきたらきっぱりやめる。
・・・振込み詐欺について、、
夫は、退屈しのぎいいからと手ぐすね引いて電話を待っています。
前にかかってきたときは、
こちらから息子と孫の名前をあげて、「どっちだ?」と聞いたら孫の名前を言う。
それで、「今どこにいるんだ?」と尋ねてみると、「会社だ」と答えたので、
「お前、いつから就職したんだ?」なんて、ずいぶんからかったらしい。
国家にもできないことがある。なんとかしろと言っても、若者の人口が減り、
収入のない老人の数が増えれば、税収も少なくなるから、どうにもならない。
ない袖はふれないのです。
・・・、いつも近所を掃いていらしたおじいさんについて、
過去にどんなことをなさっていたのかは知りません。
おそらく、何かしら大きな仕事をした方だったのでしょう。
でも晩年は、世の中の、いわば通りのいい称賛とか地位とかはもう一切関係なく、
ただ人間としてやるべきことをしていらした。
「何をしてもらうか」ではなく、「何ができるか」を考えて、その任務をただ遂行する。
それが「老人」というものの高貴な魂だと思います。
世間には未熟な子供も多いものです。
子供から何の感謝もされず、関心も寄せられない、というケースもあるでしょう。
その時は、さっさと明らめた方がいいですねえ。
いい年をした子供に今さら要求してみても、改変するものではありません。
少なくとも私の好きなのは、捨てるよりは捨てられたほうがいい。
捨てたいという息子や娘なら、捨てられてやればいい。
子育てに失敗したのかもしれないけれど、誰にとっても本当の所はわかりません。
何もかもわかろうとするのは、思い上がりのような気がします。
「為せば成る」と言う人もいるけれど、それも思い上がりです。
世の中にはどんなに努力しても報われないことがいくらでもあります。
思い通りにならないことだらけです。
長く生きていれば、それがわからないはずはないでしょう。
子供がそんなふうになったのは、もちろんかなりの部分は親の責任、残りは当人の素質。
どうにもできないことの一つの事象にすぎない。
なんだか知らないけど、うまくいかなかった、ということであって、
別に自分の生涯自体が失敗だったということでもありません。
母は、お金をいい加減に考えてはいけません、と戒めました。
人間は弱いものだから、お金がないために無用な争いをしがちである。
お金に少しゆとりがあれば、親戚や友だちとの付き合いの中で、
自分がおおらかな気持ちで損をすることもできる。しかし、お金がないと、
だれがいくら出したかということに、いつもヒリヒリ神経をとがらすようになってしまう、と。
お金は怖いものだと思いなさい、とも言われました。
人から理由のないお金を出してもらってはいけない。
得をしたい、という気持ちが起きたときは、
すでにお金に関する事件に巻き込まれる素地ができかけているから用心しなさい。
人にすすめられて、なにかを買ってはいけない。
何にお金を出して何に出さないか、世間に習うのではなく、自分の好みで決めなさい、と。
つまり母が私に教えたのは、常に自分が主人公になりなさい、と言うことだったのだと思います。
あからさまな悪徳商法に引っかかったり、
途方もない儲け話にころりと騙されたりするのは、多くの場合、強欲な年寄りです。
してもらうことを期待していると不満が募って、つい愚痴が出る。
老人の愚痴は、他人も自分もみじめにするだけで、いいことはひとつもありません。
そればかりか、愚痴ばかり言う老人のそばには、人間が集まらなくなります。
愚痴は日陰の感じを与えるからです。
反対に、何でもおもしろがっている老人には陽の匂いがして、人が寄ってきます。
通常、年を重ねた人は、世間の事柄を分析することと、
その奥にある密かな理由を推測することに長けてきます。
だから簡単には怒れなくなる。しかし最近、分別盛りの中年や世故に長けたはずの老年の中に、
すぐ怒る人が増えてきたような気がしてなりません。そういう年寄りは、
たぶん自分の立場や見方だけに絶大な信用をおく幼児性が残っているのでしょう。
年をとるということは、実にすばらしい。少々危険なところへいっても、
もうそろそろ死んでもいい年なのだから、自由な穏やかな気分でいられます。
老年は、一日一日弱り、病気がちになるという絶対の運命を背負っています。
いわば負け戦みたいなものです。
どんな人も皆、この勝ち目のない戦いから逃れることはできません。
つまり病気も込みで人間、
いいことも悪いことも込みで人生だ、という心構えをしておく必要があると私は思っています。
病気は、決定的な不幸ではありません。それは一つの状態です。
病気になるとなかなかそうは思えませんが、決して悪い面ばかりではない。
病苦が人間をふくよかなものにするケースはよくあります。
それは、その時まで自信に満ちていた人も、信じられないくらい謙虚になるからです。
謙虚さというものは、
その人が健康と順境を与えられている時は身につけることがなかなか難しいのです。
私は、生きながら人間を失っていく人もたくさん見てきました。
大儀で口を利かなくなる、耳がよく聞こえなくなる、
反応が鈍くなる。そうやって、老いと共に、長い時間をかけて部分的に死んでいきます。
この部分死が存在することを承認しなくてはならないし、
それが本番の死を受け入れる準備になるのでしょう。
宗教団体の見分け方については、いつも言うことですが、
教団の指導者が神や仏の生まれ変わりだと言わず、質素な生活をし、
信仰の名のもとに金銭を要求せず、
教団の組織を政治や他の権力に利用しようとしない限り、別に用心する必要はありません。
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きぬえさん、こんにちは。お元気ですか?
東北に旅にいらしていたんですね。
また今度お話聞かせてください^^
この本、私も読みたいなと思っていたことを
思い出しました(笑)
曾野綾子さんの本は私も好きです。
夏休みに読みたいと思います。
投稿: | 2012年8月 8日 (水) 11:34
先ほどのコメント名前を入れ忘れました。
せっかちでごめんさない。。
投稿: miki | 2012年8月 8日 (水) 11:36
mikiさん、
読書傾向が似てますネ♪、わたしたち、、、(^-^)
この本は、mikiさんのようなお若い方が読んでも為になることがたくさんあると思います。
でも、肝心の老いてからの心得は、その頃には忘れちゃうと思いますので、
更年期の頃に、また、読んでみて下さい。
知恵と力をもらえます。
本は、ほとんど図書館で借りているので、貸してさしあげらなれなくて、残念です、、、
返さなくてはならないので、こうして、長々とメモ代わりにブログに書き写してるんです、わたし、、、
(^^ゞ
投稿: きぬえ | 2012年8月 8日 (水) 19:44
めずらしく、読んだ本!
自分で読んだときは 曽野さんだからできる
でも、自分の親や自分はムリ。ってなんとなく疲労感を
感じたのですけど、きぬえさんの抜粋を読ませていただくと、
やっぱり私も曽野さんをロールモデルに。と思います。
人生後半になるほど心静かでいられたら、いいなあ。。
もう一度読んでみたくなりました。
投稿: tomo | 2012年8月 9日 (木) 23:40
tomoさん、
めずらしく、覚えております!、
tomoさんがこの本のご感想を仰っていらしたことを、、、
ご両親のことを気にかけていらっしゃるのだなと、ほほえましく伺いました、(^-^)
彼女は、失明の危機をも乗り越えられた、超人的なスーパーウーマンでいらっしゃいます。
ご主人の三浦 朱門さんの「老年の品格」も勧められて、あわせて読んでみましたが、
”罵詈雑言の限りをつくす、曽野綾子”的な一節があり、
ご家庭で、ヒスをおこして、わめきちらすようなところも感じられて、
・・・、え、わたしと同じじゃん?
ふつうのおばさん的な親近感も覚えました、(^-^)
年を取ると、思い通りにいかないことばかりで、気が短くなり、
体もあちこち不具合が出て、病院通いが始まり、
不安と焦燥感に苛まれ、そして、さみしくなります。
ただ、年を取るということは、そういうものだということを、認識しているだけで、
あきらめることがことができます。
覚悟があって、あきらめがつけば、大丈夫、きっと乗り切れます、(^_-)-☆
比べるべくもない、曽野綾子さんですが、
彼女の本は、知恵と勇気を与えてくれます、、、(^-^)
投稿: | 2012年8月10日 (金) 09:49
追伸
読むのは、十年先に、、、(*^_^*)
投稿: きぬえ | 2012年8月11日 (土) 11:57
私も爺さんになったら近所の掃除がしたいのです。
今はなかなか時間をとることができませんけども、
空き缶やら何やら‥気になって仕方ありません。
私の好きな祖父もやっぱり近所の掃除が好きでした。
そんな祖父を見て育ったからか、自分も爺さんになったら
祖父のようになりたい‥と、子供の頃から思ってました。
投稿: knys | 2012年8月18日 (土) 12:26
knysさん、
素敵なお話をありがとうございます!
近所のお掃除をするおじいさん、、、が、knysさんなら、
近所のゴミ拾いをするおばあさん、、、は、わたしですから、、、(*^_^*)
なかよくしましょうね♪、(^_-)-☆
投稿: きぬえ | 2012年8月18日 (土) 19:58