三浦しをん著 ”舟を編む”
2012年本屋大賞 大賞受賞
内容紹介
玄武書房に勤める馬締光也は営業部では変人として持て余されていたが、
新しい辞書『大渡海』編纂メンバーとして辞書編集部に迎えられる。
個性的な面々の中で、馬締は辞書の世界に没頭する。
言葉という絆を得て、彼らの人生が優しく編み上げられていく。
しかし、問題が山積みの辞書編集部。果たして『大渡海』は完成するのか──。
言葉への敬意、不完全な人間たちへの愛おしさを謳いあげる三浦しをんの最新長編小説。
大好きな、しをんさんのベストセラー。
なにがすごいって、この見事なタイトル。
圧倒されました、、、
言葉の魔術師のような、しをんさんの本領発揮。
見たことはもちろん、考えた事もない、辞書造りのバックヤードの奥行に驚かされます。
読後、きっと誰もが、もう長いこと手にしていなかった棚の奥の辞書を探し出して、
ページをめくり、その質感を試してみたくなる、と思います。
これこそが、この電子辞書の時代に、
埋もれてゆく紙の辞書の声なき声を著者が代弁したかのように思えました。
ただ、本屋大賞受賞、この素晴らしいタイトル、大好きな、しをんさん、、、
・・・あまりにも、私の期待が大きすぎました、、、
★★★☆☆
以下に、本文より、、、
どうか、いい舟を作ってくれ。荒木は願いをこめて目を閉じた。
多くの人が、長く安心して乗れるような舟を。
さびしさに打ちひしがれそうな旅の日々にも、心強い相棒になるような舟を。
たぶんこうなるだろうとは思っていた。西岡にとって女は謎の生き物で、
「なんでこいつを」と骨折する勢いで首をかしげたくなるような男を選んでみせる。
わかりやすい見た目のよさや、貯金額や、
社会生活において要求される性格のよさは選別に際してはほぼ関係ない。
女が重視するのは、「自分を一番に大切にしてくれるか否か」だと、
西岡は数々の経験からあたりをつけていた。
「誠実なのね」と女に言われたら、たいがいの男は馬鹿にされているのではないかと勘ぐる。
だが、どうやら、女は本気で「誠実」を最上級の褒め言葉だと思っているらしく、
しかもその「誠実」の内実が、
「私に対して決して嘘をつかず、私にだけ優しくしてくれる」ことを指していたりする。
言葉の持つ力。
傷つけるためではなく、だれかを守り、だれかに伝え、
だれかとつながりあうための力に自覚的になってから、
自分の心を探り、周囲の人の気持ちや考えを注意深く汲み取ろうとするようになった。
岸辺は「大渡海」編纂を通し、言葉という新しい武器を、真実の意味で手に入れようとしているところだった。
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