楊逸著 ”おいしい中国”―「酸甜苦辣」の大陸
【内容情報】
中国東北部の食文化を多数のカラー写真で一挙公開!、餃子、腸詰め、ワインまで!
中華料理で分化を味わう、芥川賞作家の食べものエッセイ。
【著者情報】
楊逸(ヤンイー)
1964年、中国黒龍江省ハルビン生まれ。
1987年、留学生として来日し、お茶の水女子大学文教育学部地理学専攻卒。
2007年、「ワンちゃん」で第105回文學界新人賞受賞。
2008年、「時が滲む朝」で第139回芥川賞受賞
じつは、中国人が芥川賞をとったと聞いて、内心面白くありませんでした。
横綱もゴルフの賞金王も外人さんでしょう?
日本語の文学賞まで~?、と、憮然としたのがほんとうです。
受賞作「時が滲む朝」は、だから、ゼッタイ読むもんかと意地になっておりましたが、
やっぱり、そういう偏見はいかんだろう、と渋々手に取った一冊。
それなのに、読み始めてまもなく、わたしは、彼女の大ファンになってしまいました。
だって、これほどまでに、流麗な美しい日本語を自在に操る人を、
どうして嫌うことなぞできましょう、、、
時代は文革、楊逸さん一家は下放され、極貧の暮しが書かれていますが、
ワイルドスワンや、大地の子で読んだ悲惨さが、まったくと言っていいほどないんです。
それは、虚勢を張っているのでも、無知なのでもなく、
著者の突出した強さと明るさの所以だと感じられました。
赤貧の暮しの中で、工夫を凝らして母親が作る手料理の数々、、、
家族総出で支度するお正月の様子、、、
そこには、何でもあるはずのこの飽食の日本に暮らすわたしが、
手に入れることのできない、ある種の豊かさが間違いなく、あるのでした、、、
そして、ページのそこここに、著者の撮った食べ物の写真が織り込まれていますが、
これが、また、いっとう、いいんです。
技巧を凝らした華美な写真を見慣れた目には、
この飾らないシンプルで素朴な写真は、まぶしいほどです。
震災で千々に乱れたこころを、何気なく、
解きほぐしてくれる優しいこの本に、どれほど、慰められたことか、、、
さすがは、芥川賞受賞作家、、、
間違いなく、第一級の物書きでいらっしゃいます。
惜しみなく、心からの賛美を送ります、、、
★★★★★
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きぬえさん、こんばんは。この本、私も読みました。面白かったです。私はものを知らなすぎるので、文革って、遠い昔の出来事と思っていたので、自分と変わらない世代が文革という社会の流れの中にいたことが衝撃でした。やはり去年ウーウェンさんの「東京の台所、北京の台所」を読みましたが、楊易さんと同世代で同じように下放されていらっしゃいました。重なる部分は多いのですが、楊さんのご家族と楊さんのたくましさ、明るさは強いなあと思いました。
やっぱり、文章から伝わっておいしそうって思うものって凝ったものじゃなくて、本当にシンプルで素朴で、おそらく私たちも食べなれた物なんだろうなと思わせる本だと思いました。
投稿: もず | 2011年4月22日 (金) 20:37
やはり、もずさんも、この本お気に入りでしたか~、(^-^)
独特な空気感がある本ですよね、、、
ウーウェンさんも下放されていらしたとは、、、
ちょっと驚きました、、、
彼女のレシピは大好きですし、読んでみたくなりました、
いつも、コメントありがとうございます、m(__)m
投稿: きぬえ | 2011年4月23日 (土) 08:30