窪 美澄著 ”ふがいない僕は空を見た”
内容(「BOOK」データベースより
これって性欲?、でも、それだけじゃないはず。高校一年、斉藤卓巳。
ずっと好きだったクラスメートに告白されても、
頭の中はコミケで出会った主婦、あんずのことでいっぱい。
団地で暮らす同級生、助産院をいとなむお母さん…
16歳のやりきれない思いは周りの人たちに波紋を広げ、
彼らの生きかたまでも変えていく。
第8回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞受賞。
嫉妬、感傷、愛着、僕らをゆさぶる衝動をまばゆくさらけだすデビュー作。
前もって書評など読んでしまうと、興味が半減するわたしは、
本屋大賞2011年第二位受賞作品というだけで、絶大な信頼のもと、
読み始めたものの、、、エロ小説のような過激な冒頭に驚き、、
・・・、あれ、なんか私、間違えて借りてきちゃった?、と、ひきそうになりました~、、、
・・・が、、、ここで、ひかないでください!
きれいごとでない、人間のありのままの姿が、、書かれています。
不器用でも一生懸命な彼を、彼女を、、
いったいどこの誰が、責めることができるというのでしょうか、、、
★★★★☆
以下本文より、助産院を営む斎藤君の母の思い、、、
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「きちんと守っていれば、先生、私、絶対に自然に産めますよね」
ノートをそっと閉じて、西村さんが笑いかけたので、私は曖昧に笑い返した。
自然、自然、自然。
ここにやってくるたくさんの産婦さんたちが口にする、自然と言う言葉を聞くたびに、
私はたくさんの言葉を空気をとともにのみこむ。
彼女たちが口にする自然、という言葉の軽さや弱さに、
どうしようもない違和感を抱きながら、私はその気持ちを言葉に表すことができない。
乱暴に言うなら、自然に産む覚悟をすることは、
自然淘汰されてしまう命の存在をも認めることだ。
彼女たちが抱く、自然という言葉のイメージ。
オーガニックコットンのような、ふわふわでやわらかく、はかないもの。
それも間違っていないのだろうけれど、自然分娩でも、高度な医療機器に囲まれていても、
お産には、温かい肉が裂け、熱い血が噴き出すような出来事もある。
時には、母親や子どもも命を落とす。
どんなに医療技術が発達したって、昔も今もお産が命がけであることは変わらないのだ。
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