浅田次郎著 ”蒼穹の昴” ★
出版社/著者からの内容紹介
この物語を書くために私は作家になった。 ――浅田次郎
汝は必ずや西太后の財宝を、ことごとく手中におさむるであろう──。
中国清朝末期、貧しい農民の少年・春児(チュンル)は
占い師の予言を信じて宦官になろうと決心した。
完全に打ちのめされました。
1996年の本ですが、今年読んだ本の、ナンバーワンです。
あまりに素晴らしすぎて、この本を称える語彙すら、わたしには、ありません、、、
★★★★★
以下、本文より、、、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「受験生はみな鬼じゃ。
人の情けも忘れ、鬼になって勉学をせねば進士登第など覚束ぬ。
そしてその鬼どもがいずれ国を動かす。
この国が諸外国に蹂躙され、民が塗炭の苦しみにあえいでおるのは、
実はみな、鬼どもが天命を荷っておるそのたたりなのじゃ。、、、 」
「才は似て非を飾るに足る・・・これは、わかりますか、少爺」
「それは、知らない。まだならってないもの」
「じゃあ、覚えておきなさい、少爺。才は似て非を飾るに足る。
いい、学問は少爺のどんないけないところも、すべて被いかくしてくれるの。
学問さえあれば、怖いものなんて何ひとつありはしないの」
「ところで貴官、見たところまた肥ったようだな、、、
脂を抜くには福建の鉄観音が一番よろしい。
出がらしは飲まずにだな、口のひん曲がるくらいの苦いやつを
食前に一杯、食後に二杯。
それでまちがいなくひと月で一貫目はやせる」
「春児は、主イエスの現し身(うつしみ)です。
デウスがこの貧しい国の民のためにお遣わしになった、天の使徒ですよ。」
「どういうことが起きようと、二度と再びこの国を敵に回してはならんよ。
わが国にとって支那を敵とすることは、天に向かって唾するようなものだ。」
フランスの修道士は、ガラス工房で働く支那人の子供を眺めながら、
「この庭続きに孤児院がありましてね。
少し齢の行った子供に仕事を覚えさせているのです。
手に職をつければ、何とか生きて行けるでしょうから」
この国では、貧しいものが豊かになることなどありえない。
神父がなりふりかまわずに
何の見返りもない孤児の養育を続けていることに気付くと、
岡は思わず組んでいた膝を正した。
「子供らはきっと、キリストを信じるのでしょうね」
養育の目的はそれしかないだろうと岡は思った。
しかし、ファヴィエ神父は笑いながら顎を振った。
「いいえ。私は子供らに主の教えを語りません」
「は?、、、、なぜですか」
「親のない子供らが、異端者として生きることを私は望みませんから。
現実はバチカンの言うほど甘くはありませんよ。
ここを出て行った子供らが、支那のどこかで美しいガラスを吹いて生きて行く。
それが神の福音です、、、」
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こんばんは

この本、もうずううぅっと昔に読みましたが
大好きな本の1冊です。
これを読んでどうしても行ってみたくて
おととし北京に行って紫禁城を見てきました。
きぬえさんの本の記事とても楽しみです
投稿: naco | 2010年11月17日 (水) 21:31
私は浅田作品で初めて手に取ったのがコレでしたので、なんてステキな世界を描く人なんだろう、って思いました。
彼って、貧しくて、だけどまっすぐで一生懸命生きてる人を描くのが本当に上手ですよね。
わたしも読み終わった後、本の中の世界に浸り過ぎて脱力してしまいました・・・・。
私が「蒼穹の昴」、「いいよいいよ、」って伝道して読んでくれた友達が、先に「珍妃の井戸」を読んだんです。そしたら「う~~ん」っていう感想だったので、先ごろ本屋さんで「中原の虹」を見つけたのですが手を出すのに戸惑ってしまいました。
やはり3作、連続でちゃんと読むのが良いですかしら?
「蒼穹の昴」からいきなり「中原の虹」に飛んだらダメですよね???
投稿: ケリーちゃん | 2010年11月17日 (水) 22:02
なんと、、、紫禁城に、、、(*^。^*)
老仏爺に、春児に、会えましたか、、、
紫禁城は、この本を読んだ者にはもう、聖地ですもの、、、
うらましすぎです、、、
投稿: きぬえ | 2010年11月18日 (木) 09:12
「珍妃の井戸」は、わたしの場合、
ずいぶん前に単体で読んだのですが、スピンオフ、という印象です。
>「蒼穹の昴」からいきなり「中原の虹」に飛んだら、、、
個人的には、このコースをおススメ致します。
春児も、神様のような存在ですが、
「中原の虹」の、張作霖は、別な意味での荒ぶる神で、、、完璧にやられました!
またとない、素晴らしい時間を過ごせました、、、
張作霖に、魂を抜かれたおばさんより、、
投稿: きぬえ | 2010年11月18日 (木) 09:22