武良布枝著 ”ゲゲゲの女房”
以下、本文より、、、
水木はひたすら漫画を描いていました。
一度仕事場に入ると、何時間も出てきません。
その間、仕事場からはカリカリという、Gペンの音が聞こえ続けているのでした。
夏のある晩のこと、私は夕食の用意ができたので、水木を呼びに行きました。
仕事場をのぞいたら、いつものように水木は無心に仕事をしていました。
左腕がないために体をねじって左の肩で紙をおさえるので、自然に顔は紙のすぐ上。
汗が流れ落ちて原稿にシミがつかないように、
タオルの鉢巻をして、その体勢のまま、ひたすら書き続けていました。
あまりに夢中になっているその姿に私は声をかけることができず、
しばらくその場に立ちすくんでしまいました。
精魂こめてマンガを描き続ける水木の後ろ姿に、私は正直、感動しました。
これほど集中してひとつのことに打ち込む人間を、私はそれまでに見たことがありませんでした。
以来、ひたすらカリカリと音を立てて描く後ろ姿から、目を離せなくことが、しばしばありました。
背中から立ち上る不思議な空気、いまの言葉でいうならオーラみたいなものに、
吸い寄せられるような感じがすることさえありました。
私は次第に、その姿に尊敬の念を抱くほどになっていったのです。
空襲にあい、水木は左腕を失ったのですが、
その傷口がふさがると、水木は近くの現地人の集落に出かけ、
そこに住む人たちと仲良くなり、食べ物をわけてもらえるようになったのです。
「大事なのは笑顔だ!、こっちが笑えば、向こうもにこっと笑う。それがいちばん大事なんだ」
義母はとにかくユニークな人でした。
戦争時代にバケツリレーの練習にも参加しなかったそうですし、
祝日にみんなが国旗をかかげていても、
自分の家の門には絶対にかかげようとしなかったのだそうです。理由を聞くと、
「負け戦とわかっているのに、そんなもん、やってもムダだらが」と得意げに言うのです。
なんだかいまは、「家庭環境」、「結婚」、「就職」など、
その後のすべてが決まってしまうかのように思い込んでしまう人が多いと聞きます。
人生の入り口での状態は、と言えば、
水木も私も、お世辞にも、幸運だったとはいえないでしょう。
でも、「いろいろなことがあったけれど、幸せだ」と素直にいえるのは、
「水木が自分自身を信じ続け、私も水木を信じ続けてきた」からだと思います。
自分が選んだ道をひたむきに生きていれば、
「来るべきときが必ず来る」と、ふたりとも信じてきたのです。
この大人気朝ドラを、何度見ようと思ったことか、、、
けれども、朝起きてきたら、ラジオのスイッチを入れて、そのまま、
日中は、まったくテレビを見る習慣のない私は、、、忘れてしまうのでした。
ついに、一度も観ることがないまま、番組は終わってしまったので、本を、、、
プロ級の筆運びに、すっかり感心しながら読みました。
けれども、たぶん、これは、テレビのほうが、おもしろいだろうな、、、と思いながら、、、
あ~あ、、観たかったなァ~、、、(-.-)
わたしの大、大、大好きな本です、
水木しげる著 ”がんばるなかれ①”
”がんばるなかれ②”
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